ともりの困りごと研究所

読みもの / やり方の型

家の事務を「1枚の画面」にしてもらう — AIへの頼み方と、頼んではいけないところ

ともりの困りごと研究所 / 2026年8月30日

結婚・引っ越し・退職のあとに残る細かい手続き。何が残っているか自分でも分からず、順番も分からない。これを、AIに「1枚の画面」にしてもらいます。できるのはこれです。

3つの列に分かれた画面。左は手続きの一覧、中央は上から下へ矢印でつながった図、右は選んだ項目の詳細。クレジットカードに9月10日と入れると、その手前にある銀行口座・本人確認書類・マイナンバーカード・運転免許証の行にも「後続期限: 2026-09-10」と出て、色が変わっている。

クレジットカードの期限に1つ日付を入れると、その前に済ませないといけないものが全部、同じ日付で色づく。「カードを9月10日までに、ということは口座はその前」を、自分で計算しなくてよくなります。日付を入れているのは私で、AIではありません(そこが肝です)。

頼み方は下に全部そのまま置いてあります。3つの文を順に送るだけです。そして、AIに書かせてはいけないものがあります——期限の日数と、金額と、書類の名前。そこは空欄のままにさせて、窓口に聞いて自分で埋めます。

できたものを触る

下は、私(研究所)が実際にAIに作らせた1枚をそのまま置いたものです。チェックを押すと済みになり、再読込しても残ります。期限の欄に日付を入れると色が変わります。書いたものはこの端末の中だけに残り、どこにも送られません。

別の窓で開く / 細い画面では3つの列が1列に畳まれます(「スマホの幅でも1列に畳んで」と頼んだ分です)。これは「1か月前に結婚して名字が変わった会社員・車なし・賃貸」という架空の人の分です。自分の分は、下の型を自分のことで送ると作れます。

なぜ「文で答えて」ではなく「1枚を作って」なのか

同じことを文で頼むと、よくできた箇条書きが返ってきます。読めます。でも、読み終わったあとに残るのは「長い文章」です。次に何をするかは、毎回自分で読み返して探すことになります。

1枚にしてもらうと、済んだものは消え、次にやるものだけが残る。順番も、色も、空欄も、画面が自分で示してくれます。冷蔵庫に貼る紙と同じで、道具のほうが自分の状態を持ってくれるので、こちらが覚えておかなくてよくなります。

いまのAIは、その場で動くHTMLを1枚書けます。ChatGPT・Gemini・Claude のどれでも同じように頼めます(研究所が試したのはGeminiです。どれの宣伝でもありません)。

頼み方(3つの文を、上から順に送る)

1つめ。まず質問させる

いきなり「1枚作って」と言うと、自分が書き出せたものだけの1枚ができます。忘れているものは、忘れたまま画面になります。だから先に、AIに質問させます。

1つめ:棚卸しの型

【いまの状況】
きっかけ: (結婚・離婚・引っ越し・退職など。いつのことかも)
もう済んだこと: (分かる範囲で)
まだ終わっていないこと: (思いつくままでいい。順番も網羅もいらない)

【頼み方】
いきなり一般的なやることリストを出さないでください。
まず、私が何を持っていて何が残っているかを洗い出したいので、私に質問してください。
一度に全部ではなく5問ずつ、はい/いいえか短い言葉で答えられる形にしてください。
質問は、法律で届出の期限が決まっているものから先に聞いてください。

洗い出しが終わったら、次の3つに分けてください。
1. 期限があるもの
2. 期限は無いが、先にやらないと次に進めないもの(何の前に何が必要か)
3. 急がなくていいもの/やらなくてもいいもの

そのとき、期限の日数・手数料の金額・必要書類の名前は書かないでください。
あなたの知識は古くなっている可能性があり、数字を書かれると
私が確かめずに信じてしまうからです。
代わりに、それぞれについて「どこで確かめるか」
(役所の何課・どの窓口・どの会社の何)を書いてください。

ではまず、最初の5問をください。

5問ずつ答えます。「車は持っていますか」「マイナンバーカードは持っていますか」と聞かれると、自分では書き出せなかったものが出てきます。2〜3往復で終わります。

2つめ。それを1枚にしてもらう

3つの分類が返ってきたら、同じ会話の続きでこれを送ります。研究所の好み(不要なものを足さない・道具が自分の状態を示す)は、そのまま文にして入れてあります。そこを書かないと、使い方の説明や達成率のパーセントが付いてきます。

2つめ:1枚にしてもらう型

ありがとうございます。この3つの分類を、そのまま1枚の画面にしてください。

文章で説明せず、単一のHTMLファイルを1枚だけ作ってください。CSSもJavaScriptもその1ファイルの中に書いてください(外部の読み込みはしないでください)。返事はHTMLだけにしてください。前置きも解説もいりません。

画面は3つの列にしてください。
左: チェックリスト(小さめ)。押すと済みになります。再読込しても済みのままにしてください(localStorage)。
中央: 依存のつながりが分かる図。「何の前に何が必要か」を矢印で示してください。
右: いま選んでいる項目の詳細。窓口に電話で聞くときの台本を入れてください。
中央の図の項目を押すと、右にその項目の詳細が出るようにしてください。左のチェックリスト・中央の図・右の詳細が同じ項目を指しているときは、同じものだと見て分かるようにしてください。

【ここでも数字を書かないでください】
期限の日数・手数料の金額・必要書類の正式な名前は、あなたが書かないでください。あなたの知識は古くなっている可能性があり、数字を書かれると私が確かめずに信じてしまうからです。

代わりに、こうしてください。
・各項目に「期限(窓口で聞いて入れる)」という日付の欄を置いてください。既定は空です。あなたが日付を入れておかないでください。
・私がその欄に日付を入れたら、今日からの近さで色が変わるようにしてください(近いほど濃く)。色は JavaScript が私の入れた日付から計算してください。
・入れた日付も、チェックの状態と一緒に残してください。
・ある項目に期限があり、その前に済ませないといけないものがあるときは、その手前の項目にも「いつまでに」が伝わるように図の上で分かるようにしてください。
・必要な書類と費用は、右の詳細の中に空の欄として置き、窓口で聞いて私が埋める形にしてください。
・「どこで確かめるか」(役所の何課・どの窓口・どの会社の何)は書いてください。これは数字ではありません。

【私の好み(そのまま守ってください)】
・不要な情報を入れないでください。使い方の説明・注意書き・前置き・「はじめに」のような文章を画面に足さないでください。
・道具が自分の状態を示すようにしてください。次に何をすればいいかは、文で説明するのではなく、空欄・色・チェックの有無で分かるようにしてください。
・チュートリアル・ツアー・進捗バー・達成率のパーセント表示は要りません。
・色は少なく。塗りつぶすのは1画面に1つだけにしてください。
・スマホの幅でも、1列に畳んで読めるようにしてください。

返ってきたHTMLを、メモ帳などに貼って .html という名前で保存し、ダブルクリックで開けば使えます(Geminiなど、その場で動かして見せてくれるものもあります)。

3つめ。動かなかったら、そう言う

今回、2回とも、チェックを押しても済みになりませんでした。押すとその項目が選ばれるだけで、チェックが入らない。よくある作りそこないです。次の一言を送ったら、2回とも1回で直りました。

3つめ:直させる一言

チェックボックスを押しても、済みになりません。押すとその項目が選ばれるだけで、チェックは入らないままです。再読込しても何も残っていません。押したら済みになり、再読込しても残るように直してください。返事はHTMLだけにしてください。

直し方のコツは1つだけです。「直して」ではなく「押すとこうなってしまう。こうなってほしい」と、目に見えたことをそのまま書く。原因は書かなくていいので、直せます。

通してみて分かったこと

「数字は書かないで」を外すと、その場で数字が出てくる

同じ頼み方から、この一行だけを抜いて(代わりに「期限の日数・金額・必要な書類の名前も書いてください」と頼んで)2回通しました。2回とも、確かめようのない数字が画面に入りました。

右の詳細欄に、手数料 6,000円(残存有効期間同一)または 16,000円(10年切替)、必要書類 一般旅券発給申請書、戸籍謄本(全部事項証明書 / 発行から6ヶ月以内)、写真、現在所持しているパスポート、と書かれている。

「書かないで」を外した回。右の欄に金額と書類名が並びます。画面の上では、確かめたことと確かめていないことの区別がつきません。もう1回のほうは「6,000円(記載事項変更)」と出ましたが、その名前の申請は、いま都道府県の旅券窓口の案内に載っていません(研究所が2026年8月29日に確認)。

では、何も言わなかったらどうか。数字のことに一切触れない頼み方でも2回通しました。1回は数字ゼロ、もう1回は「戸籍謄本(発行から6ヶ月以内)」が入りました。つまり——頼めば必ず数字が入る。黙っていると2回に1回入る。「書かないで」と言うと入らない。入るか入らないかを運に任せないために、あの一段落が要ります。

「書かないで」を入れた回は、4回とも——棚卸しをしてから頼んだ2回も、いきなり頼んだ2回も——日数も金額も書類名も一つも出ませんでした。代わりに空欄と、「どこで確かめるか」だけが並びます。

日付欄が空で、必要書類メモ・費用メモも空の状態の画面。

空欄が「窓口に聞け」と言っている状態です。説明文を足さなくても、埋まっていないことが目で分かります。

質問させる工程を飛ばすと、期限のあるものが1枚から消える

試しに、棚卸しをせず、自分で思いつくままに書いたリストだけを渡して1枚にしてもらいました。4回やって、マイナンバーカードは一度も出てきませんでした。この件でいちばんはっきりした期限があるのがそれなのに、です。

AIは、こちらが書かなかったものを勝手に足しません。だから1つめの「まず質問して」を飛ばすと、忘れているものは忘れたまま画面になります。棚卸しさせた回では、マイナンバーカードは最初の5問の2問目に出てきました。「法律で期限が決まっているものから先に聞いて」の一行が効いています。

形は毎回ちがう

同じ文を2回送って、返ってきた2枚は別物でした。

もう1回通したときの画面。クレジットカードに9月10日と入れてあるが、その手前の銀行口座やマイナンバーカードの行には何も出ていない。

1回目。中央は3つの見出しに分かれた縦並びで、段と段の矢印はありません。冒頭の絵と同じくクレジットカードに9月10日を入れていますが、その手前の銀行口座やマイナンバーカードには何も出ません——「期限が手前の項目に伝わる」が実装されていませんでした。この1枚も置いてあります。

いちばん難しく頼んだところ——期限をその手前にさかのぼって伝える——は、2回のうち1回しかできませんでした。できていない回は、見た目には整っているので、頼んだ側が気づかないと気づけません。頼んだことが入っているかは、自分で1つずつ触って確かめてください。

できなかったことは、できないと言う

「進捗バーは要りません」「達成率のパーセントは要りません」と書いたぶんは、8回とも守られました(1つも出ませんでした)。「使い方の説明を足さないで」も守られました。ここは素直です。

「近いほど濃く」も効いていました。見本の中を見ると、3日以内は赤、7日以内は橙、14日以内は黄、それより先は色なし、と4段階で書かれています。この段階を決めたのはAIですが、日付を入れるのは利用者なので、AIが日数を断定したことにはなりません。「色は計算させ、数字は入れさせない」が、この形でちょうど分かれます。

正直な線

数字は書かせない。書かせると間違えます。書かせないと止まります。期限・手数料・必要書類は、必ず窓口の答えで埋めてください。前回、文で頼んだときは「運転免許の氏名変更は30日以内・罰則なし」と断定されました。条文(道路交通法第94条第1項)は「速やかに」で日数を書いておらず、罰則はあります(第121条第1項第10号、二万円以下の罰金又は科料)。

回によってブレます。形も、実装されている機能も、分類も動きます。出てきた1枚は確定した答えではなく、たたき台です。

AIは電話をかけてくれません。窓口が開いているのは平日の日中で、それがこの困りごとのいちばん硬いところです。台本までは作れます。かけるのは自分です。

向いていない事務もあります。親が亡くなったあとの手続きのように、期限を外すと取り返しがつかないもの(相続の放棄は3か月です)。棚卸しと台本づくりには同じように使えますが、期限の確定は必ず窓口か専門家に。

この記事も古くなります。今日それを実際に踏みました。前回の記事(8月29日)で使ったモデルは、翌日には「新しい利用者には提供されていません」と返るようになっていました。1日です。だから覚えてほしいのは個々の答えではなく、数字はAIに書かせず、窓口に聞いて埋めるという頼み方のほうです。

前回、文で頼んだときにAIが誤ったこと

この記事の前に、同じ困りごとを「文で答えて」と頼んで通しました。制度に関わる部分を役所などの資料で照合した結果です(2026年8月29日時点)。

AIが言ったこと資料で確かめた結果出どころ
運転免許の氏名変更は「30日以内」誤り。条文は「速やかに」で、日数は書かれていない道路交通法第94条第1項(e-Gov法令検索)
「期限を過ぎても罰則はありません」誤り。二万円以下の罰金又は科料道路交通法第121条第1項第10号(e-Gov法令検索)
免許を一番最初に変える順番が逆。新しい名字のマイナンバーカードか本籍記載の住民票が要る警視庁・福岡県警の記載事項変更のページ
「期限を過ぎると失効する場合があります」(マイナンバーカード)確認できず。総合サイトにその記述はない。自治体のページには「14日を過ぎても手続きできます」とあるものが複数あるマイナンバーカード総合サイト・自治体のページ

ほかに、年金手帳(マイナンバーが年金記録に収録されていれば氏名変更の届出は原則不要)とパスポート(「記載事項変更申請」という名前の申請は窓口の案内に無い)でも古い案内が出ました。「印を付けて」では止まらず、「書かないで」で止まった——それが前回いちばんはっきり出たことで、今回の型はそこから来ています。

灯の検証記録

使ったものGemini API・モデル gemini-3.6-flash・temperature 0.7。Node の fetch で直接呼び出した(無料枠の鍵)。ChatGPT・Claude では試していない。前回の記事で使った gemini-2.5-flash は、この日には「新しい利用者には提供されていない」という返答になっていて呼べなかった
周回ぜんぶで8枚作らせた。①棚卸しの型を通す(3往復)→ マイナンバーカードが2問目に出た。数字は一つも出なかった。②その続きで「1枚にして」を2回送る(=見本の2枚)→ 2枚とも数字ゼロ。2枚ともチェックが効かない。③「押しても済みになりません」を1回ずつ送る → 2枚とも1回で直った。④棚卸しをせず、自分で書いたリストだけで「1枚にして」を2回 → 数字ゼロ。マイナンバーカードは出ない。⑤④から「数字を書かないで」の段落だけを抜き、代わりに「金額と書類名も書いて」と頼んで2回 → 2回とも入った。⑥数字のことに一切触れずに2回 → 1回は数字ゼロ、1回は「戸籍謄本(発行から6ヶ月以内)」が入った
確かめたことチェックを押す→再読込→済みが残る(実測)。日付を入れる→再読込→残る(実測)。日付を入れた項目の手前に「後続期限」が伝わる(2枚のうち1枚)。スマホ幅で1列に畳まれる(実測)。出力の全文を機械で調べて、日数・金額(半角・全角・漢数字)の表記が1つも無いこと(実測)。色の段階は見本のコードで確かめた(3日/7日/14日で切り替わる)
確かめていないことChatGPT・Claude で同じ文を送ったときの返り。会話をまたいで条件が残るか。台本を持って実際に窓口に電話したときに役に立つか。自治体ごとの運用差。見本に載っている「どこで確かめるか」の窓口名が、すべての自治体で正しいかどうか(窓口の名前は自治体で違います)
見本の中身架空の人(1か月前に結婚して改姓・会社員・車なし・賃貸・免許/パスポート/NISA/医療保険あり)の分。実在の人の事情ではありません

元になった困りごとの声は、前回の記事のために2026年8月29日にBlueskyの公開検索で集めたものです(20の言葉・重複を除いて482件)。引用は個人が特定されない形に書き直しています。