ともりの困りごと研究所

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PTA・町内会の負担 — 全国の状況と、解決策の仮説

全国で何が起きているか。今の仕組みの何がありがたいか。解決策として、どういう案があり得るか。公開されている声と、公的な調査だけを材料にした現状の整理です。解決策は仮説で、実例では確かめていません。

ともりの困りごと研究所 / 2026-08-29

この整理の結論

PTA・町内会の負担は、人のやる気ではなく、毎年、役が総入れ替わりする制度の形から来ている。そのうち仕組みで軽くできるのは年度の継ぎ目に何を置くかで、当番の重さと人間関係には別の手が要る。

年度の変わり目 年度の変わり目 当 番 年に何度も 引き継ぎ 年度の境目だけ (渡す形が、ここに無い) 連 絡 一年じゅう 4月56 789 101112 123月

1年の帯 × 3本のレーン。当番は年に何度も立ち、引き継ぎは年度の両端にしか塊が無く、連絡だけは切れ目なく続く。この後の章はすべて、この帯のどこが重いかの話。

声がいちばん具体的なのは、当番・引き継ぎ・連絡の3つ。どれも「去年のことを知っている人が、もういない」形をしている。公的な調査も同じ方を指していて、加入しない理由の1位も、人材の課題の1位も、活動の中身ではなく「役」。それでも、付き合い自体は否定されていない——地域での付き合いは必要ない、と答えた人は1.6%。嫌われているのは付き合いではなく、渡し方。

全国で起きていること

町内会・自治会は、法律の上では「地縁による団体」と呼ばれる任意の集まりです(地方自治法第260条の2)。数は多く、加入率は10年下がり続けています。

298,700
全国の自治会・町内会等の数
平成25年4月1日現在・総務省調べ。うち法人格を持つ認可地縁団体は44,008
6.9%
指定都市で、平均加入率が10年で下がった幅(H22→R2)
10年分の加入率を毎年度把握している624市区町村を対象とした総務省の集計(表記は▲6.9%)。人口1万未満の町村でも2.9%、最も大きいのは人口20万〜30万で7.6%。8つの人口区分すべてで下がっている
1,099
自治会の負担軽減に「取り組んでいる」市区町村
全1,741市区町村が回答(令和3年10月時点)。多い順に、活動場所の提供支援/担当窓口の一元化/広報物の直接配布/委嘱委員の推薦依頼の見直し

出典: 総務省「自治会・町内会等とは(参考資料1)」/総務省自治行政局市町村課「自治会・町内会の活動の持続可能性について」(地域コミュニティに関する研究会 第2回資料1・令和3年10月25日)。負担軽減の取組は、順位は本文に書かれているが個別の件数は図から読む形なので、ここでは順位だけを書いている。

PTAについては、全国の数字がそもそも無い

町内会・自治会には、団体数も加入率の推移も、国が集めた数字があります。PTAにはそれが見つかりませんでした。これは調べ足りなかったという話であると同時に、この問題の性質そのものでもあります——全国で何団体あって何人が入っているのかを、誰も定期的に数えていない。

文部科学省の社会教育調査(令和3年度)の対象は、都道府県・市町村の教育委員会、公民館、図書館、博物館、青少年教育施設、女性教育施設。PTAなどの社会教育関係団体は、調査の対象に入っていません。

数字が無いと、こういうことが起きます——自分の学校のPTAの負担が、よそと比べて重いのか軽いのかを、誰も言えない。入る人が減っているのか、活動が減っているのかが、実感でしか語られない。「うちの学校では」で話が終わり、仕組みの話に上がらない。だからこの資料では、数字は町内会・自治会のものを使い、PTAは声と、自治体が公表している相談から見ています。

出典: 文部科学省「令和3年度社会教育統計の公表について」の調査対象欄で確認。他の統計を網羅的に当たったわけではないので、「国のどこにも無い」とまでは言えない。

福岡市で起きていること

福岡市が令和4年度に、市内の自治会・町内会の会長に聞いた調査があります(1,854件・回収率80.2%)。全国の傾向が、そのまま数字になっています。

81.1%
加入率
前回調査から4.6ポイント減
52.5%
加入しない理由の1位「役員になることや、隣近所との人間関係を負担に感じるから」
2位は会費47.0%、3位は必要と思わない43.3%
79.3%
人材の課題の1位「役員のなり手がない」
運営を手伝う人がいない35.2%、事務処理ができる人がいない14.2%
4.9%
ホームページ等(LINEを含む)を開設している自治会
開設したい9.4%、予定もない83.8%。住民への広報は、回覧・掲示77.0%/各戸配付64.7%

入らない理由の1位も、人材の課題の1位も、活動の中身ではなく「役」です。そして連絡の手段は、いまも紙が主です。

出典: 福岡市「令和4年度 自治協議会・自治会等アンケート」の自治会・町内会アンケート調査結果(調査期間 令和4年9月〜12月、調査数2,313・回答1,854)。79.3%は問28「人材に関する課題」の1位で、問28〜30を通した1位ではない。

一人の具体は、どこまで掘れたか

研究所の物差し(誰が・どの瞬間に・何をしようとして・何に詰まり・今どう凌いで・その何が嫌か)を、福岡市が公表している相談1件に当ててみます。6つのうち埋まったのは4つでした。道具を作るには足りず、整理までなら書ける、という位置です。

実測
誰が
働く世代の夫婦。妻が町内会の班長と衛生連合会の役を兼ねている(子の有無・年齢・勤務の形は書かれていない)
実測
どの瞬間に
行事が平日中心に置かれているため、働いている時間と正面からぶつかる(時刻までは書かれていない)
実測
何をしようとして
役を務めながら、家庭との両立を保とうとしている
実測
何に詰まり
任期やローテーションが分かりにくく、活動が長期化する。活動内容も多岐にわたる
未確認
今どう凌いで
分かるのは「市に相談を出した」ことだけ。日々どう回しているかは書かれていない
未確認
その何が嫌か
「負担を感じる」までで、続かない理由の言葉が無い。ここが道具の形を決める場所なので、埋まっていないと作れない

出典: 福岡市「寄せられた市民の声」/町内会・自治会における役員負担の過重化についての相談・改善要望(2026年2月受付・公表2026年4月22日・くらし・安全)。市が個人情報を削って公表しているものなので、そのまま引いている。公表期間は6か月なので、いずれ消える。

詰まり その一 — 当番

当番は、1年のあいだ何度も回ってきます。声で繰り返し出てくるのは、当番そのものの重さより、やり方が説明されないまま道具だけ渡されることと、時間帯が選べないことです。

旗振り当番を、事前の説明なしに道具だけ渡されて始めた。手元にあったのは、コピーを重ねて文字がつぶれた説明書1枚。組む相手も来なかった。
当番の候補がどれも、送りの時間や寝かしつけと重なっていて、引き受けられる役が残らない。
ごみの当番は、分別されていないもののやり直しが自分に回ってくる。何を断ればいいのかも書かれていない。
当番を外注できないか、と考えた。ただ、頼める先が思いつかない。

この一枚の声は、Bluesky の公開検索で読んだものを灯が一般化したもの(本文は保存していない・投稿者は特定できない形にしている)。投稿者の地域は分からないので、九州のものとは限らない。次の一枚の引き継ぎの声には、ママスタで読んだものも含まれる。

詰まり その二 — 引き継ぎ

ここが、いちばん声の密度が高い場所でした。渡されるのは物(袋・USB・書類)で、渡されないのは「なぜそうしたか」と「いつ何をするか」。渡す側も受け取る側も、同じところで止まっています。

引き継ぎの箱にUSBメモリが入っていた。書式は前の前の人が作ったもので、去年の分は入っていない。
班長になったが、班の人の名前は分かっても家が分からない。最初に回覧板を持って行く先で止まった。
4月になったのに、いつ引き継げばいいのか誰も教えてくれない。自分から次の人へ行っていいのかも分からない。
前の班長が「また来ます」と言ったきり来ない。何も聞いていないので、相手が来るまで放っておくことにした。
本部役員の引き継ぎ書類を書いている。1万字を超えてもまだ終わらない。
デジタル化を進めた年の翌年、引き継ぎ資料が何も残っていなかった。渡されたのは「会長に任せておけば大丈夫」の一言だけ。

詰まり その三 — 連絡の手段

連絡は1年じゅう続きます。困りごとは両側から出ていました——紙と電話しかなくて届かない側と、役ごとにグループが増えすぎて溢れる側。片方だけ見て「デジタル化すればいい」と言うと、もう片方を作ることになります。

連絡が回覧板と電話しかない。思い出させる手立てが無いので、期日に間に合わない家が出る。
回覧板に「今日うかがいます」と書いても、最後の1軒が終わらない。何度も足を運ぶことになる。
地域の役と子ども会と部活で、グループが7つ動いている。どれが自分宛てなのか分からない。
連絡に特定の会社のサービスを使うことを前提にされるのがつらい。使っていない人は、そこで抜ける。
名簿に住所も電話も載せない取り決めになっている。個人情報を出したくない人が少なくないので、連絡網もそこで止まる。
手段を変えるより先に、使える人が3分の1もいないのが実際のところ、という声もあった。

困りごとを、5つに分けてみる

読んだ声を分けると、この5つに収まりました。下の2つ(情報の流れ・制度の不透明)は、上の3つを重くする側の困りごとです——時間もお金も人間関係も、何をどこまでやるのかが書かれていないところで余計にかかっています。

時間
当番と行事が平日・朝に置かれていて、働く時間と正面からぶつかる。選べる役が残らないので、断ると角が立つ側に回る
お金
会費の集金が現金の手渡し。不在の家に何度も足を運ぶ。最後の1軒が終わらないのが、班長の仕事のかなりを占める
人間関係
役の決め方(くじ・押し付け・順番)と、断るときに事情を説明させられること。断り方に手続きが無いので、個人の関係の問題になる
情報の流れ
回覧板と電話が主で、届いたかどうかが分からない。一方で連絡先を出したくない人も多く、手段を変える話が個人情報の話とぶつかる
制度の不透明
任意なのか義務なのか、任期はいつまでか、何をどこまでやるのか。書いた物として存在しないので、毎年その場の交渉になる
隣のアパートの路上駐車の苦情が回ってきた。これは班長の仕事なのかが分からず、組長に聞いたら「班のことは任せます」と言われた。掲示板で同じ役の人に聞くと、やることの一覧が町ごとにまるで違った。

福岡市に届いた相談が名指ししていたのも、このうち最後の一つでした——「役員任期や引き継ぎの整理、業務や行事の一部委託、役割の位置づけの明確化」。

今の仕組みのままでも、何がありがたいのか

ここを軽く扱うと、この整理は「やめればいい」という結論に流れます。実際には、やめると別に費用が発生するものが、この帯の下で回っています。

防災の受け皿誰が住んでいるか広報とごみ集積所声をまとめて出す
94.5%
自主防災組織のうち、町内会単位で作られているもの
全159,967組織中151,244。小学校区単位は1.9%(平成27年4月1日現在・消防庁)。組織数は令和6年4月1日現在で167,233に増えている
40.1%
未加入世帯があることで困っていることの1位「どんな人が住んでいるか分からない」
福岡市の会長の回答。名簿ではなく顔で分かることが、そのまま防災と見守りの土台になっている
1.6%
「地域での付き合いは必要ない」と答えた人
内閣府・令和7年10月調査(速報・1,604人)。望ましい付き合いは「行事や会合に参加する程度」28.1%、「参加して困ったときに助け合う」26.4%

出典: 消防庁「自主防災組織等の現状」/令和6年版消防白書/内閣府「社会意識に関する世論調査」令和7年10月調査(速報)。声の側にも「面倒だが、防災を考えるとやっておいた方がいい。町内の様子が何となく見える」「一人では言えないことを、数百世帯の声にできることに意味がある」「大きな災害のとき、班の人に安否確認を兼ねて声をかけて回った」という言葉があった。

そのうえで、何が失われているか

前の一枚に挙げたありがたさは、いま特定の人にだけ荷重をかけて成り立っています。放っておくと、ありがたさの側から先に崩れます。

判断が消える
去年なぜそうしたかが渡らないので、同じ失敗が毎年繰り返される。1年で覚えたことが、1年で捨てられる
時間のある人に
平日昼の行事と朝の当番を前提にすると、引き受けられるのは限られた人になる。働く世代が増えるほど成り立たなくなる構造そのもの
残った人が重く
加入率が下がると、同じ仕事を少ない人で分けることになる。福岡市では「加入世帯の側で不公平感が生じている」が28.5%
断り方が無い
任意加入であることも、断れることも、書いた物になっていない。断る側にも受ける側にも角が立つ
依頼が別々に
複数の課からばらばらに依頼が届く。総務省の調査でも、担当窓口の一元化が負担軽減の取組の上位に並んでいる

声の中には「加入者が地区の3分の1以下で、しかも全員が高齢者。防災の受け皿としてはもう成り立たない」というものもありました。前の章の94.5%は、いま実際に機能しているという意味ではなく、そこに載せられているという意味です。

仮説 その一 — 制度の形を変える

3つの仮説を並べます。どれも実例で確かめていません。「こうすべき」ではなく「こういう案がある」までです。

「年度の役」をやめて、「やること」ごとに引き受ける形にする

1年任期の会員制ではなく、行事・当番・会計といった仕事の単位で、その都度引き受け手を募る。引き受けた人は、その仕事が終われば終わり。1年ぶんの役を丸ごと背負う人がいなくなるので、働く世代が入りやすくなる、という考え方。福岡市に届いた相談の「業務や行事の一部委託」「役割の位置づけの明確化」も、この方向を向いています。

前 提
規約の改定と総会の議決が要る。住民側から起こせるが、時間はかかる
要るもの
誰が何を引き受けたかの記録。仕事の一覧そのものが、まず書かれていない
解けないこと
引き受け手が集まらない年に、誰が埋めるのか。結局いつもの人に寄る可能性がある

この形を実際に採っている自治会・PTAがどれくらいあるか、うまくいっているかは調べていません。上の「解けないこと」は、旗振り当番をボランティア制にしたが手が挙がらず、強制に戻りそうだという声が実際にあったことから書いています。

仮説 その二 — 今の形のまま、外から減らす

住民側の仕組みは変えず、行政から来る仕事のほうを減らす

自治会・町内会の仕事には、自分たちで決めたことと、行政から降りてきたことが混ざっています。後者だけなら、自治体の判断で減らせます。総務省の調査で全国1,099市区町村が取り組んでいる負担軽減策は、多い順に活動場所の提供支援/担当窓口の一元化/広報物の直接配布/行政が委嘱する委員の推薦依頼の見直し。窓口の一元化は「役所内のどこに聞けばいいか分からない」「複数の課から別々に依頼が来る」という負担に直接効いています。

前 提
自治体側の判断。住民の側からは起こせず、要望して待つ形になる
要るもの
どの課から年に何件の依頼が来ているかの棚卸し。これが無いと減らす対象が決まらない
解けないこと
当番と引き継ぎは残る。減るのは行政からの依頼だけで、この資料の3つの詰まりのうち1つにしか届かない

福岡市が相談への回答として挙げたのも、この線でした——「自治会活動ハンドブック」を作って配り、各区の地域支援課が相談に応じる。冊子と窓口は、行政が今すぐ出せるものとしては筋が通っています。ただし、冊子は前の年に何が起きたかを知りません。

仮説 その三 — 継ぎ目に1枚だけ置く

3つのうち、仕組みで解ける形になっているのはここだけでした。当番表でも名簿でもなく、「去年、何をどう決めたか」を残す1枚を、継ぎ目に置く。

引き継ぎの1枚 / 班長(◯◯班)・2026年度
何をしたか
回覧板を月2回/集金は4月/ごみ当番の表
いつ動いたか
集金は4月第2週まで。総会は3月第4日曜
誰に聞いたか
区長/区役所の地域支援課
つまずいた所
回覧の順番。最後の1軒が留守がち
やらなくてよかったこと
名簿の作り直し(前年のままで足りた)

欄は5つだけ。人の名前は書かず、役の名前で書く。

前 提
前の人が5分で書けること。長い引き継ぎ書は、1万字書いても終わらないという声がある
要るもの
来年の人が確実にたどり着ける置き場所。紙でも画面でも、置き場所が変わった年に消える
解けないこと
そもそも書かない人がいる。当番の重さも人間関係も、これでは何も軽くならない

よろず町の第二号として置くなら、窓口は地域振興課。最小の形は、この5欄を役名と年度だけで作れて、翌年度の人が同じ場所で読めること。架空の班のデータだけのモデルにし、実在の自治会に入れる約束はしない。作るかどうかはまだ決めていません——この資料は整理までです。

この資料で、確かめていないこと

出典(この整理で実際に開いたもの・リンクは中身まで確かめたもの)
総務省「自治会・町内会等とは(参考資料1)」/ 総務省自治行政局市町村課「自治会・町内会の活動の持続可能性について」(令和3年10月25日)/ 消防庁「自主防災組織等の現状」/ 令和6年版消防白書/ 内閣府「社会意識に関する世論調査」令和7年10月調査(速報)/ 文部科学省「令和3年度社会教育統計の公表について」/ 福岡市「令和4年度 自治会・町内会アンケート調査結果」/ 福岡市「寄せられた市民の声」2026年4月22日公表分。
声は、Bluesky の公開検索(robots.txt が公開部分のクロールを許可)とママスタ(robots.txt で ClaudeBot を名指しで許可)から。1件ごとに間を空け、本文は保存していない。