ともりの困りごと研究所

読みもの / 整理と仮説

保育園と幼稚園の「併願」は、国のFAQに書いてあった — ただし2つの列は、別々の決まりで並んでいる

ともりの困りごと研究所 / 2026年9月29日

保育園と幼稚園に両方申し込むこと(併願)を禁じる条文は、読んだ5本の国の法令の本則には見つかりませんでした。それどころか国は、新しい制度が始まる前の2015年3月に、事業者向けのFAQで「保育所等と幼稚園を併願した場合」と名指しして、保育の認定を受けて保育所に入れなかった子が幼稚園に入れる道を書いていました。0〜2歳の小さな園を3歳で出る子(小規模保育の卒園者)も、同じ答えの中で名指しされています。ただし保育園と幼稚園は、申込み先も、並べ方の決まりも別々の2つの列です。読んだ5本の法令の本則には、申込みや結果の時期を定めた条がありませんでした。役所へ行くまで分からないのは、そのためだと研究所は考えています。

どこから来た問い

公開されている書き込みに、こういう声がありました。子どもが0〜2歳の小さな保育施設に通っていて、3歳の春にそこを出る。次の行き先として幼稚園も考え始めたところで、保育園と幼稚園に両方申し込めるのかが分からず、市区町村の窓口へ聞きに行くまで確かめようがなかった——という内容です。

窓口では、その地域では併願できると言われたそうです。そして聞いてみて分かったのは、幼稚園の申込みと選考が、保育園の結果が出るより先に終わるということでした(保育園の4月の結果は冬、幼稚園の申込みは秋)。「保育園に落ちたら幼稚園を探す」では間に合わない。

研究所が気になったのは、その答えがその地域についての答えだったことです。別の町では併願できないことがあるのか。それとも国が何か決めているのか。今回はそこを、国の法令とFAQで確かめました。

「併願」を禁じる条文は、見つからなかった

保育園・幼稚園の利用の決まりを持っている法令を5本、全文で取り、「併願」の語を数えました。数え方が正しく働いているかを確かめるために、在ると分かっている語も同じ方法で数えています。

読んだもの(本則)「併願」確かめのために数えた語
子ども・子育て支援法0件「認定」388か所
子ども・子育て支援法施行規則0件「連携施設」5か所
特定教育・保育施設…の運営に関する基準(府令)0件「抽選」3か所・「連携施設」15か所
家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準0件「連携施設」13か所
児童福祉法0件「認定」171か所

ただ、法令はもともと「併願」という言葉を使わない書き方をするので、0件は「禁じていない」の証明にはなりません。本当に確かめたいのは、「保育の申込みをしている子が、幼稚園にも申し込んで入れるのか」です。その答えは、条文ではなくFAQの側にありました。

国のFAQは「併願した場合」と名指ししていた

2015年4月に今の制度(子ども・子育て支援新制度)が始まる直前、国は幼稚園や保育所の事業者向けにFAQを出しています。いまもこども家庭庁の事業者向けのページに「全文(Ver.7)」として載っている版(平成27年3月)に、次の問いがありました。

Q28)2号認定を受けた場合でも、幼稚園に入ることはできるのでしょうか。
新規に2号認定を受け、利用調整の結果、保育所等に入所できない場合(保育所等のみの利用を希望した場合、保育所等と幼稚園を併願した場合)又は既に2号認定を受けている場合(小規模保育の卒園者が入園、転居により保育所等から転園等)には、特例施設型給付を受けて幼稚園を利用することが可能です。いずれの場合も、入園後、一定期間内に保育所等への転園の希望の有無を確認し、希望がない場合は1号認定へ変更することが考えられます。
(「事業者向けFAQ(よくある質問)【第7版】」平成27年3月)

少し言葉をほどきます。3歳以上の子が保育園や幼稚園を使うとき、市町村から「認定」を受けます。保育が必要な家庭の子は「2号」、そうでない子は「1号」です。この問いが言っているのは、保育の認定(2号)を受けたのに、利用の調整の結果、保育園に入れなかった子が、幼稚園に入ってよいということです(すでに2号の認定を持っている子も同じ)。そのとき国が挙げた場面の中に、「保育所等と幼稚園を併願した場合」と「小規模保育の卒園者」が、2つとも入っていました。

同じFAQの最初の問い(Q1)は、共働きの家庭が幼稚園を使えなくなるのか、と尋ねています。答えは、客観的には保育の認定を受けられる家庭でも、保護者が幼稚園を望めば、その選択で幼稚園を使える仕組みにした、そのときは1号の認定を受ける、というものでした。Q28にも、幼稚園に入ったあと保育園への転園を望まなければ1号へ変えることが考えられる、とあります。認定は、行き先に合わせて付け替えるものとして書かれています。

条文の側にも、それを支える形があります。子ども・子育て支援法第28条第1項第3号は、保育の認定を受けた3歳以上の子が、幼稚園で教育を受けたとき(法律の言葉では「特別利用教育」)に、市町村が給付費を出せる場合として挙げています。これは給付(お金)の条なので、入園の権利を書いた条ではありません。言えるのは、保育の認定の子が幼稚園に通う形を、法律が給付の側からあらかじめ用意している、というところまでです。

⚠ ここまでの話は、今の制度に入った幼稚園(施設型給付を受ける幼稚園。認定こども園の幼稚園の部分も含む)の話です。今の制度に入っていない私立幼稚園も多く、そちらは別のしくみ(施設等利用給付)で扱われます。そちらの入園の決まりは、今回は読んでいません。

2つの列は、並べ方の決まりが違う

併願は国の想定の中にある。それなのに、なぜ役所で聞くまで分からないのか。研究所は、保育園と幼稚園が別々の列で、並べ方の決まりも別々だからだと見ています。

保育園の列(2号・3号)幼稚園の列(1号)
だれが並べるか市町村が利用の調整をする(児童福祉法 第24条第3項)園が選考する(運営基準 第6条第2項)
定員を超えたときの並べ方保育の必要の程度と家族等の状況を勘案し、必要性が高い子が優先(同 第6条第3項)抽選・申込みの順・設置者の理念に基づく選考その他の公正な方法(同 第6条第2項)
選考の仕方を先に示すか示してから選考する(同 第6条第4項)示してから選考する(同 第6条第4項)
いつ申し込み、いつ決まるか第6条は並べ方だけを書いていて、申込みの期間も結果の日も書いていない

保育園の列は「点数」で並び、幼稚園の列は「抽選・先着・園の方針」で並びます。並べる人も、並べる物差しも違う。読んだ5本の法令の本則のうち、申込みや利用の調整に触れる条をすべて見ても、申込みの期間や結果の日を定めた箇所はありませんでした。書き込みの人が窓口で聞いた日程も、その町とその園のものでした。幼稚園の選考が先に終わるのは、この2つの列が別々に動いていることから起きている、と読めます。

なお国のFAQには、幼稚園の列(1号)の選考で優先してよい例として、「在園児・卒園児の弟妹」などと並んで「連携施設である地域型保育施設の卒園者である場合」が挙がっていました(同 Q30)。0〜2歳の小さな園を出る子を、幼稚園の側で優先する形も、国は例として示しています。

3歳で出る子のために、国は「連携施設」を用意していた

0〜2歳の小さな園(小規模保育・家庭的保育など)には、国の基準で「連携施設」を確保する決まりがあります。連携施設の役目は3つあり、その3つめがこれです。

当該家庭的保育事業者等により保育の提供を受けていた利用乳幼児を、当該保育の提供の終了に際して、当該利用乳幼児に係る保護者の希望に基づき、引き続き当該連携施設において受け入れて教育又は保育を提供すること。
(家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準 第6条第1項第3号)

連携施設になれるのは「保育所、幼稚園又は認定こども園」です(同 第6条第1項)。つまり国は、3歳で小さな園を出る子の行き先として、最初から幼稚園も含めて受け皿を用意する作りにしていました。この条は、市町村が条例を作るときに「従うべき基準」とされています(同 第1条第1項第2号)。

ただし、この3つめの役目には、市町村が外してよい場合が2つ書かれています(同 第6条第6項)。1つは、市町村が利用の調整で、小さな園を出る子を優先的に扱う措置などを取っているとき。もう1つは、連携施設の確保が著しく困難なときです。書き込みの人は窓口で、卒園する子には加点があると聞いていました。その町の加点がどの決まりから来ているかは研究所には分かりませんが、利用の調整での優先は、国の基準が連携施設の代わりとして挙げている手段の1つです。

その受け皿は、15年の経過措置の中にある

連携施設の決まりには、附則で経過措置が付いています。

家庭的保育事業者等(…)は、連携施設の確保が著しく困難であって、…必要な適切な支援を行うことができると市町村が認める場合は、第六条第一項本文の規定にかかわらず、この省令の施行の日から起算して十五年を経過する日までの間、連携施設の確保をしないことができる。
(同基準 附則第3条。運営基準 附則第5条にも同じ形の定めがある)

施行の日は2015年4月1日なので、15年は2029年度の末(令和11年度末)までです。この年数は最初から15年だったのではありません。こども家庭審議会の子ども・子育て支援等分科会の資料(2024年10月17日)に、経緯が書いてあります。

いつ経過措置の期限
制度の始まり(2015年)平成31年度末まで(5年)
平成31年度の検討5年延ばして令和6年度末まで(10年)。受け皿の役目について、連携施設の範囲も広げた
令和2年度受け皿の役目を外せる場合を広げた(上の第6条第6項の形)
2024年10月の対応方針(案)「前回同様、5年間延長」して令和11年度末まで。いまの条文は「十五年」になっている

同じ資料に、実際にどれだけ連携施設が決まっているかの調査があります。先に分母を書きます。全国の地域型保育事業所に聞いたもので、回答は3,845事業所(回収率52.0%)、令和6年10月3日時点の集計です。

同じ資料の中で、1つめと2・3つめは分母が違います。そのうえで言えるのは、3歳からの受け皿の役目の相手が見つかっていない小さな園が1割あまり残っていて、国はそれを見て経過措置をもう一度延ばした、ということです。連携施設の見つからない理由として資料が挙げているのは、「連携先の施設にとって、連携施設となるメリットがない」「近隣の保育所等と距離が遠い」「近隣の保育所等で受け皿が整備されていない」でした。

なぜ、役所で聞くまで分からないのか(ここからは仮説)

研究所の読みはこうです。

併願は、国の設計の中では「ありうる場面」として書かれています。保育の認定を受けて保育園に入れなかった子が幼稚園に入る道があり、0〜2歳の園を出る子には幼稚園も含めた受け皿を用意する決まりまである。ところが、それを「併願した場合」と言葉で書いてある場所は、事業者向けのFAQでした。こども家庭庁の保護者向けの案内(よくわかる「子ども・子育て支援新制度」のページ)には、「併願」の語はありませんでした。

もう1つ、順番の食い違いがあります。FAQのQ28は、幼稚園を「保育園に入れなかったあと」の受け口として書いています。書き込みの人が詰まったのは、実際の日程ではその順番が逆になっていること——保育園の結果より先に、幼稚園の選考が終わる——でした。

そして実際に申し込む段になると、保育園の列は町が点数で、幼稚園の列は園が抽選や先着で、それぞれの日程で動いています。2つの時期を合わせる条が読んだ法令に無いので、「両方に申し込めるか」は制度の問いではなく、「自分の町と、行きたい園の日程が、どう重なっているか」という問いになります。これは町ごと・園ごとに違うので、窓口で聞くまで分からない。窓口の答えがその地域に限った答えだったのは、正確だったと思います。

もう1つ、3歳で小さな園を出る子には、国が用意した連携施設という受け皿があるはずでした。それが10年以上たっても経過措置の中にあり、代わりに町の利用調整での優先(加点)で埋めることが認められています。受け皿が「園と園の約束」から「町の点数」に置き換わった場合、保護者は結局、保育園の列の結果を待つことになり、幼稚園の列との日程のずれを自分で埋めることになる——そういう形がありうる、と研究所は考えています。どの町がどちらの形を取っているかは、名前を挙げずに数える方法をまだ見つけていません。

確かめたこと/確かめていないこと

読んだもの子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第19条・第20条・第23条・第28条(e-Gov法令検索)。児童福祉法(昭和22年法律第164号)第24条(同)。特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)第6条・第38条・第42条・第46条・附則第5条(同)。家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準(平成26年厚生労働省令第61号)第1条・第6条・附則第1条・第3条(同)。子ども・子育て支援法施行規則(平成26年内閣府令第44号)は語を数えるためだけに全文を取得。いずれも e-Gov の法令API から取得し、法令IDは法令一覧APIから引きました。「事業者向けFAQ(よくある質問)【第7版】」(平成27年3月・PDF。表紙に発行元の記載は無い。こども家庭庁の子育て支援事業者の方向け情報のページに掲載)Q1・Q28・Q30。こども家庭審議会 第7回子ども・子育て支援等分科会 資料6「子ども・子育て支援新制度に関する経過措置に係る検討について」(2024年10月17日・PDF)1〜5頁
数え方法令の全文XMLを <Article> ごとにタグを外して空白を潰し、本則だけを対象に「併願」を数えた。同じ方法で「認定」「連携施設」「抽選」を数えて、在る語が拾えることを確かめてから0件と書いた。日程については、同じ5本の本則で「申込」「利用調整」「調整を行う」を含む条(計31条)を拾い、その中の「期間」「期日」「時期」「日程」「までに」をすべて目で見た(申込みや結果の時期を定めたものは0。当てはまったのは認定の有効期間・障害児の入所・号の列挙などだけ)。附則はこの走査に入れていない。こども家庭庁の保護者向けページ「よくわかる『子ども・子育て支援新制度』」を取得して「併願」0件(このページから張られたPDFは無かった)。FAQは pdftotext -layout で全文を出し、「併願」「重複」「同時に」「両方」で引いた(「併願」はQ28の1か所だけ)
確かめたこと5本の法令の本則に「併願」の語が無いこと。FAQのQ28が「保育所等と幼稚園を併願した場合」と「小規模保育の卒園者」を、2号認定の子が特例施設型給付を受けて幼稚園を使える場面として挙げていること。支援法第28条第1項第3号が、満3歳以上の保育認定の子が幼稚園から「特別利用教育」を受けたときを特例施設型給付費の対象として挙げていること(柱書きは「必要があると認めるときは…支給することができる」)。運営基準第6条が1号と2号・3号で選考の仕方を分け、申込みや決定の時期を書いていないこと。家庭的保育基準第6条第1項が連携施設を「保育所、幼稚園又は認定こども園」とし、第3号で保護者の希望に基づく受け入れを役目にしていること。同条第6項が利用調整での優先などを、受け皿の役目を外せる場合として挙げていること。附則第3条と運営基準附則第5条が、いまの条文で「十五年」であること。運営基準第38条が、小さな園に、利用の始まりの前に連携施設の種類・名称を書いた文書を渡して説明することを求めていること
確かめていないこと今の制度に入っていない私立幼稚園の、入園の決まり。運営基準第6条は今の制度に入った園(特定教育・保育施設)を縛る条で、入っていない園には掛かりません。経過措置を10年から15年に延ばしたのがどの改正府令か(改正府令の番号で法令APIを引くと0件だった。分科会の対応方針(案)といまの条文の「十五年」が合うことまでを確かめた)。FAQ第7版より新しい版があるか(こども家庭庁のページでは第7版が「全文」として載っている)。町ごとの申込みの日程の分布(国が並べた一覧は探していない)。入園料を払ってから辞退したときの扱い(無償化の自治体向けFAQは、今の制度に入っていない幼稚園の入園料を、入園前に払った場合も施設等利用費の対象とし、入園初年度の在籍月数で割るとしている。入園しなかった場合の扱いは直接は書かれていなかった。入園料の町の補助の条件は町ごとに違う)
していないこと個別の相談に答えること。特定の町や園の決め方の良し悪しを言うこと。実在の自治体名や園の名前を挙げること。書き込みの文章を再掲すること

いま困っている方へ

ここに書いたのは、国が公開している法令・FAQ・審議会の資料を読んだ結果です。一般的な話であって、あなたの町と園の事情は研究所には分かりません。

0〜2歳の小さな園に通っているなら、園の利用を始める前に受け取った文書(重要事項の説明)に、連携施設の種類と名前が書かれていることになっています(運営基準 第38条)。3歳からの受け皿の役目を引き受けている連携施設があるかどうかは、園に聞くのが早いはずです。

小さな園を出る子が、保育園の利用の調整でどう扱われるか(優先されるか、加点があるか)は、市町村が決めています(家庭的保育基準 第6条第6項第1号は、それを受け皿の代わりとして認めている)。お住まいの市町村の保育の担当の窓口で聞けます。

幼稚園の選考の仕方(抽選か、先着か、園の方針か)は、今の制度に入った幼稚園なら、選考の前に保護者に示すことになっています(運営基準 第6条第4項。募集要項などで示してもよい、とFAQのQ30)。今の制度に入っていない幼稚園にはこの条は掛からないので、その園に直接聞いてください。

保育の認定を受けたまま幼稚園に入った場合、あとで保育園への転園を望むかどうか確かめられ、望まなければ1号の認定に変わることがある、と国のFAQは書いています(Q28)。認定の扱いは、お住まいの市町村の窓口で確かめてください。

無償化のしくみについては、研究所の「3歳から無償」は、年齢の線ではなかったにも書いています。

元になった声について

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