読みもの / 整理と仮説
早生まれの子は保育園に入りにくいのではないか、という不安の声があります。生まれ月ごとに、4月1日時点でその子が生後何日になるかを12か月ぶん全部数えました。すると、差が出ているのは「入れるかどうか」ではなく、0歳の4月に入るために、育休をどれだけ切り上げなければならないかのほうでした。
4月に生まれた子なら約12か月。3月に生まれた子なら1か月未満です。同じ「0歳児クラスの4月入所」という1つの枠に、この2人が並んでいます。
研究所が公開されている場所から拾ったものを、こちらで一般的な形に書き直したものです。原文は残していません。どこの誰かも書きません。
早生まれの0〜1歳児は保育園に入りにくいのではと不安な親(2026年8月25日に拾ったもの)
この形の不安は、確かめようがない形をしています。国は待機児童の数を年齢別には出していますが、生まれ月別には出していません。だから「早生まれは不利だ」も「そんなことはない」も、どちらも数字では言えない。
そこで研究所は、数字が出ていないところを推測する代わりに、誰でも同じ答えになる計算のほうから数えてみることにしました。暦です。
保育所のクラスは学年と同じで、4月2日から翌年4月1日までに生まれた子が1つのクラスになります(国の公定価格でも、年齢の区分は「年度の初日の前日における満年齢」で決めるとされています(PDF))。だから0歳児クラスの4月入所とは、4月1日の時点で自分の子が生後何日かによって、まったく違う出来事になります。
| 生まれた月 | 翌年4月1日の時点で | 0歳の4月に入るなら、育休は |
|---|---|---|
| 4月(2日〜) | 生後336〜364日 | 約12か月とれる |
| 5月 | 生後305〜335日 | 約11か月 |
| 6月 | 生後275〜304日 | 約10か月 |
| 7月 | 生後244〜274日 | 約9か月 |
| 8月 | 生後213〜243日 | 約8か月 |
| 9月 | 生後183〜212日 | 約7か月 |
| 10月 | 生後152〜182日 | 約6か月 |
| 11月 | 生後122〜151日 | 約5か月 |
| 12月 | 生後91〜121日 | 約4か月 |
| 1月 | 生後60〜90日 | 約2〜3か月 |
| 2月 | 生後32〜59日 — 途中で57日を割る | 約1〜2か月。4日以降に生まれた子は申し込めない(平年。うるう年は5日以降) |
| 3月 | 生後1〜31日 | 申し込めない |
2026年4月1日を基準に、出生日を0日目として数えた日数です。うるう年(2月29日がある年)は境目が1日ずれます。
読み方はこうです。4月生まれの親は、育休をまるまる1年とってから0歳児クラスの4月入所に申し込めます。12月生まれの親は4か月で切り上げることになります。3月生まれの親には、その選択肢そのものがありません。
ここで出てくる「57日」という数字が、次の話です。
受け入れの下限としてよく言われる数字ですが、児童福祉法にも保育所の基準にも、この日数は出てきません。
児童福祉法の第39条は、保育所を「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設」と定めています。生後何日から、という下限はありません。
57日という数字が出てくるのは、働く側の法律のほうです。労働基準法の第65条第2項は、こう書いています。
使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
産後8週間=56日。その翌日、つまり出産から57日目が、働きに出られる最初の日です。保育所の受け入れ下限として広く使われている「生後57日」は、ここから逆算された日付です。保育の側が「この月齢から預かれる」と決めた線ではなく、親が働きに出られる最初の日に、園の側が合わせたものということになります。
だから、この線には2つの性質があります。ひとつ、法律の条文には「57日」とは書かれていないので、園はもっと遅い月齢(3か月から、6か月から、1歳から)を下限にしてもよく、実際にそうしている園があります。ふたつ、この線を割っている子は、園の都合ではなく暦の都合で、その4月に申し込めません。
こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」に、年齢別の数字が載っています。同じ表から2つのことが読めますが、答える問いが違います。
1つめ。待機している人のうち、どの年齢が多いか。2025年4月1日時点の待機児童は全国で2,254人。そのうち1・2歳児が1,877人で、83.3%を占めます。0歳児は164人(7.3%)です。
2つめ。申し込んだ人のうち、何%が待機になったか。こちらは同じ資料の申込者数で割ります。0歳児は164人÷141,980人で0.12%。1・2歳児は1,877人÷1,001,671人で0.19%。1・2歳のほうが約1.6倍です。
この2つは、どちらも本当のことですが、大きさがまるで違って見えます。83.3%対7.3%は11倍に見え、0.19%対0.12%は1.6倍です。差が開いて見えるのは、1・2歳の申込者が0歳の約7倍いるからで、ひとりの子にとっての通りにくさが11倍になっているわけではありません。
| 年齢 | 申込者数 | 待機児童数 | 申込者に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 0歳児 | 141,980人 | 164人 | 0.12% |
| 1・2歳児 | 1,001,671人 | 1,877人 | 0.19% |
| 3歳以上児 | 1,621,584人 | 213人 | 0.01% |
この割り算には、大きな注意が要ります。申込者数にはすでにその園に通っている子(継続利用)も入っています。1・2歳は継続の子が多いので、新しく申し込む人だけで数えれば、0.19%より高くなるはずです。国はその内訳を出していないので、研究所には計算できませんでした。
もう1つ、申込者数そのものを見ると別のことが分かります。0歳児の申込は141,980人。1歳児は473,953人で、3.3倍です。多くの家が、0歳ではなく1歳から預けることを選んでいる——というより、育休を1年とればそうなります。
全国で2,254人という数字は、入れなかった人の数ではありません。同じ資料に、数から外した人の内訳が載っています。
待機児童は、申込者数から「実際に利用している人」と「除外4類型」を引いた残りとして数えられています。2025年4月1日の内訳はこうです。
| 区分 | 人数 |
|---|---|
| 特定の保育園等のみ希望している者 | 39,469人 |
| 育児休業中の者 | 15,043人 |
| 地方単独保育事業を利用している者 | 5,531人 |
| 求職活動を休止している者 | 4,446人 |
| (特例保育等を利用している者) | 20,075人 |
| 待機児童数 | 2,254人 |
この4つを足して「入れなかった人」と呼ぶことはできません。意味がそれぞれ違うからです。「特定の保育園等のみ希望している者」の39,469人には、ほかの園を案内されて断った人が入っています。通えない距離だったのかもしれないし、預けたい園が決まっていたのかもしれない。そこは資料からは分かりません。
ただし「育児休業中の者」15,043人は、この記事の話とまっすぐ関係します。入れなかったので育休を延ばした人です。3月生まれの子の親が0歳の4月をあきらめると、次の4月まで育休を延ばすことになり、この列に入ります。国の資料でも、待機児童が減った理由として「育児休業を予定より長く取得する保護者の増加」を挙げる自治体の割合が前年より増えたと書かれています。
ここから先は研究所の見立てです。制度の説明ではありません。
数えた範囲では、生まれ月そのものが入所の可否を決めているのは2月4日以降〜3月生まれの、0歳児クラスの4月入所だけ(平年。うるう年は2月5日以降)です。それ以外の月は、申し込むこと自体はできます。差が出ているのは、その申し込みをするために何を差し出すかのほうでした。4月生まれは育休を1年とったうえで申し込めます。12月生まれは4か月で切り上げます。同じ枠に見えて、払う代償が違う。
1歳児の申込が0歳児の3.3倍あるのは、多くの家が育休を1年とるからです。ここまでは選択です。ところが3月生まれの子の親には、0歳の4月を選ぶ道が最初から無いので、1歳の4月に自動的に回されます。同じ「1歳から預ける」でも、選んだ人と、そこしか無かった人が混ざっています。介護の記事でも同じ形を見ました——制度の側には道があるのに、探している人の側から見ると分岐が無い。
国の統計は年齢別で、生まれ月別ではありません。だから「早生まれは入りにくいらしい」という話は、確かめる手段がないまま伝わり続けます。確かめられないことは、たいてい実際より大きく感じられます。今回の計算で分かるのは暦の部分だけで、「早生まれだと入れなかった人が多いか」には答えていません。
全国2,254人という数字は小さく見えます。しかしその数え方には、上に並べた除外があります。数が減ったことと、探している人が楽になったことは、別のことです。この記事も、待機児童数を「入りにくさ」の代わりには使っていません。
作れないもの。「あなたのお子さんは入れます/入れません」という判定。入れるかどうかは住んでいる市町村と、その年の申込数と、園ごとの受け入れ月齢で変わります。研究所はそのどれも知りません。
作れないもの、その2。「◯月に産むと有利です」という助言。生まれる月は選べるものではありませんし、選べるものとして書いた瞬間に、選べなかった人を責める文章になります。
作れそうなもの。上の表①は、自分の子の生年月日を入れれば1行で済む形にできます。4月1日時点の日齢と、0歳の4月に入る場合に育休が何か月になるかを出すだけの、判定をしない小さな紙です。作れるかどうかはまだ分かりません。それより先に確かめたいのは、この計算が実際に役に立つのかどうかのほうです。
| 読んだもの | こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」の公表資料(PDF)。児童福祉法第39条、労働基準法第65条、育児・介護休業法第5条の条文(e-Gov法令検索)。こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度自治体向けFAQ 第28版」の年齢区分に関する項(PDF)。読んだ日は2026年9月10日 |
|---|---|
| 数え方 | 表①は2026年4月1日を基準に、出生日を0日目として日数を引き算したもの(各月の1日生まれと末日生まれの2点。4月のみ2日から)。「生後57日」の境目は、うるう年でない年は2月3日生まれ、うるう年は2月4日生まれ。待機の割合は、公表資料の同じ表にある待機児童数を申込者数で割ったもの(0歳児 164÷141,980、1・2歳児 1,877÷(473,953+527,718)、3歳以上児 213÷1,621,584) |
| 確かめたこと | 待機児童数2,254人のうち1・2歳児が1,877人(83.3%)であること、0歳児が164人(7.3%)であること(資料の実測)。申込者数が0歳児141,980人・1歳児473,953人・2歳児527,718人であること(実測)。除外4類型の内訳が特定の保育園等のみ希望39,469人・育児休業中15,043人・地方単独5,531人・求職活動休止4,446人であること(実測)。申込者数2,765,235人が、利用2,678,417+特例20,075+除外64,489+待機2,254と一致すること(検算)。児童福祉法第39条に月齢の下限が書かれていないこと、労働基準法第65条第2項が産後8週間の就業を禁じていること(条文の実測)。この記事に載せたURLが、読んだ日にすべて開けること(実測) |
| 確かめていないこと | 生まれ月別の入所率(国はこの数字を出していません。この記事はそれを推測していません)。4月入所の申込締切がいつかは市町村ごとに違い、確かめていません(締切の時点でまだ生まれていない場合にどう扱うかも同じ)。園ごとの受け入れ下限月齢の分布。「特定の保育園等のみ希望している者」39,469人の中身。申込者数のうち継続利用がどれだけかの内訳(国は出していません)。ここに書いた仮説が、実際に保活をしている人の感覚と合っているかどうか |
| していないこと | 個別の相談に答えること。入れるかどうかを判定すること。実在の自治体名を挙げること。何月に産むとよいという話をすること |
ここに書いたのは、国が公開している資料と法律の条文を読んで数えた結果です。一般的な話であって、あなたの事情は研究所には分かりません。申込の締切も、受け入れの下限月齢も、選考の点数の付け方も、市町村と園によって違います。
確かめる先は、お住まいの市町村の保育の担当窓口です。入所案内(「保育所入所のしおり」などの名前で配られています)に、その年の締切と、受け入れの月齢と、選考の決まりが書かれています。制度の全体像はこども家庭庁の保育のページにあります。
育児休業と給付金のことは、勤め先か、厚生労働省の育児・介護休業法のページ、またはお住まいの地域のハローワークへ。保育所に入れないことを理由に育休を延ばす場合の手続きには、市町村が出す書類が要ります。この記事はその手続きの説明ではありません。手続きの側は、別の記事で読みました(2025年4月に条件が変わっています)。
この記事は、2026年8月に公開されている場所から拾った1件の声から始まっています。文章そのものは残していません。研究所が残しているのは、こちらで書き直した1行と、どこから拾ったかだけです。同じことで困っていたら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。