ともりの困りごと研究所

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「保育園に入れなかったから育休を延ばす」の中身 — 2025年4月から、休むことと、お金が出ることの条件が分かれた

ともりの困りごと研究所 / 2026年9月11日

保育所に入れなかったので育休を1歳の先へ延ばす、という道があります。その条件が2025年4月に変わりました。新しい条件が付いたのは給付金(お金)の側だけで、会社を休むこと自体を決めている省令の側には、いまも付いていません。

2つの省令に、ほとんど同じ一文が並んでいます。片方にだけ、去年、括弧がひとつ付きました。

どこから来た問いか

前の記事(「早生まれは保育園に入りにくい」の中身)の続きです。

前の記事では、生まれ月ごとに「4月1日の時点でその子は生後何日か」を12か月ぶん数えました。差が出ていたのは入れるかどうかではなく、0歳の4月に入るために育休をどれだけ切り上げるかのほうでした。3月生まれの子の親には、そもそも0歳の4月という選択肢がありません。

その場合、次の4月まで育休を延ばすことになります。前の記事は、そこで「この記事はその手続きの説明ではありません」と書いて終わりました。今回はその手続きのほうを読みました。

数えたもの① — 同じ一文は7か所ある。括弧が付いたのは1か所だけ

e-Gov法令検索で、2つの省令の全文を取って数えました。探した一文は「保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行つているが……当面その実施が行われない場合」です。

この一文は、育児・介護休業法施行規則に4か所、雇用保険法施行規則に3か所、合わせて7か所あります。準用(別の条文で「前条の規定を準用する」と書いて使い回すこと)を数えれば9か所です。

どの省令の、どこ何を決めているところか括弧
雇用保険法施行規則
第101条の25 第1号
給付金を1歳6か月まで延ばせる場合あり
同 第101条の26給付金を2歳まで延ばせる場合(上を準用)あり(準用)
同 第101条の29の2 第1号チ給付金を3回目以後の育休にも出す場合なし
同 第101条の40 第8号出生後休業支援給付金についての定め(法第61条の10第3項第2号)なし
育児・介護休業法施行規則
第6条 第1号
休むことを1歳6か月まで延ばせる場合なし
同 第6条の2休むことを2歳まで延ばせる場合(上を準用)なし(準用)
同 第5条 第8号1歳までに2回休んだ人が、もう一度申し出られる特別の事情なし
同 第10条 第6号申出から1か月を待たずに育休を始められる事由なし
同 第19条 第5号1歳以降の育休の申出を撤回した人が、もう一度申し出られる特別の事情なし

「速やかな職場復帰」という言葉は、育児・介護休業法施行規則には1度も出てきません(0件)。出てくるのは雇用保険法施行規則の、上の1か所だけです。

付いた括弧は、これです

雇用保険法施行規則の第101条の25第1号。太字が、付け足された部分です。

育児休業の申出に係る子について、〔中略〕保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行つているが、当該子が一歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合(速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限る。)

付けたのは令和6年3月25日厚生労働省令第47号で、施行は2025年4月1日です。同じ省令の附則に、いつからの人に適用するかも書かれています。

いっぽう育児・介護休業法施行規則の第6条第1号は、こうです。

法第五条第三項の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当該子が一歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合

括弧はありません。「速やかな職場復帰のため」とハローワークが認めること——この条件は、会社に育休の延長を申し出る側には付いていないということになります。付いているのは、その休みのあいだに給付金が出るかどうかのほうだけです。

数えたもの② — 境目は「申請した日」ではなく「生まれた日」

令和6年厚生労働省令第47号の附則第2項(経過措置)を読んで、逆算しました。

附則は、新しい第101条の25は「施行日(2025年4月1日)以後にその子が一歳に達する被保険者について適用する」と書いています。厚生労働省のリーフレットは、「子が1歳に達する日」とは1歳の誕生日の前日のことだと注記しています。

そこから逆算すると、こうなります。

子が生まれた日1歳に達する日延長の条件は
2024年4月1日まで2025年3月31日まで前のまま
2024年4月2日から2025年4月1日から新しい条件

この境目の日は、保育所のクラスの区切りとぴったり同じです。前の記事で書いたとおり、0歳児クラスは4月2日から翌年4月1日までに生まれた子で1つになります。つまり新しい条件は、ある学年の子から一斉に掛かったことになります。

1歳6か月から2歳への延長のほうは、「1歳6か月に達する日」が2025年4月1日以後かどうかで見ます。2023年の秋に生まれた子あたりが境目になりますが、日付の数え方が別なので、ここでは表にしていません。

数えたもの③ — 申告書には、8つの問いがある

厚生労働省が公開している「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」(手書用・PDF)を読んで数えました。

この申告書は、2025年4月から延長のときに必ず付けることになった3つの書類のうちの1枚です。残り2つは市区町村に出した利用申込書の写しと、市区町村が出す「利用できない」旨の通知(入所保留通知書など)です。

申告書の3枠目には、申し込みについての問いが8つ並んでいます。

問い何を見ているか
① 利用(入所)申込みをしたか申し込み自体をしたか
② 申込みをした日1歳に達する日までに申し込んだか
③ 利用開始希望日1歳の誕生日以前の日を希望日にしたか
④ 入所保留を積極的に希望する意思表示をしていないか入れないことを望んでいなかったか
⑤ 利用(入所)保留の有効期限通知が1歳の誕生日に効いているか
⑥ 内定を辞退したことがあるか入れたのに断っていないか
⑦ いちばん近い施設名と、片道の通所時間通える範囲の園に申し込んだか
⑧ 片道30分以上の場合、その理由遠い園だけにした理由があるか

⑧で選べる理由は5つ(通勤の途中にある/30分未満で通える園が無い/開所時間や曜日が勤務に合わない/子に特別の配慮が必要/その他)です。リーフレットの側には、これにきょうだいが通っている園を希望する場合と、30分未満で通える園が全て過去3年以内に虐待等で行政指導を受けていた場合も認められると書かれています。

ここに並んでいる8つが、そのまま「何を見られるか」です。様式を見れば分かる。ただし、様式を見る機会は、たいてい延長を申請する時に来ます。

「認められない」と国が書いている場面

厚生労働省のリーフレット2枚(2025年4月からの変更点・延長の可能性がある方向けの留意点)に、名指しで書かれているものです。

逆に、例外として認められると書かれているものが2つあります。ひとつは、子の病気や障害のために市区町村が申し込みを受け付けない場合。もうひとつは、その市区町村に、1歳の誕生日を含む月の入所の募集そのものが無い場合——このときは1歳の誕生日の2か月後までの日を希望日にして申し込めばよい、とされています(ただし1歳6か月から2歳への延長では認められません)。

仮説 — ここから先は研究所の見立てです

制度の説明ではありません。手続きの案内でもありません。

1. 「休めるが、お金は出ない」という隙間が、条文の上に開いている

2つの省令の一文は、いま同じではありません。会社に対して育休の延長を申し出る条件には、ハローワークの認定が入っていません。給付金のほうには入っています。条文どおりに読むなら、育休は延びたのに給付金は出ない、という組み合わせが起こりうる形になっています。

研究所が確かめたのは条文とリーフレットの文言までで、実際にその組み合わせがどれだけ起きているかは分かりません。介護の記事で見たのと同じ形です——制度の側は2つに分かれているのに、探している人の側からは1つの出来事に見える。

2. いちばん効くのは締切で、それは町ごとに違う

前の記事で「確かめていないこと」に置いたのが、4月入所の申込締切でした。市町村ごとに違うので、どの町かを書かずには確かめられないからです。ところが今回のリーフレットは、その締切について国の側からはっきり書いています——申込期限に間に合わなければ延長は認められない、受付期間は市区町村により様々、4月入所の受付は他の月よりかなり早い場合が多い、と。

外から確かめられない日付が、給付金が出るかどうかを決める位置に入っている。前の記事で書けなかった場所が、そのまま効く場所でした。

3. 「様式に欄がある」ことと、案内に書いてあることは別

これで3例目です。よろず町の「休みたいと伝える1枚」を作ったときも、介護の面談で聞かれることは国の様式(課題分析標準項目)に書いてあるのに、サービスの案内の側には出てこない、という形を見ました。今回の8つの問いも同じで、申告書を見れば全部書いてあります。ただし申告書を見るのは、たいてい申請するときです。申し込みをする時点で見るものではありません。

4. 決まりの向きと、負担の向きは違う

リーフレットは、この変更の理由を書いています。「育児休業及び給付金の延長を目的として、保育所等の利用の意思がないにもかかわらず市区町村に入所を申し込むことは、制度趣旨に沿わない行為です」——延長のためだけの申し込みを止めるのが目的だ、ということです。目的そのものははっきりしています。

ただし、新しく増えた手間(申込書の写しを取っておく、希望日を1歳の誕生日以前にする、通所時間を書く)は、最初から働きに戻るつもりで申し込んだ人にも同じだけ掛かります。とくに「申込書の写しを取っておく」は、申し込みの時点で知っていないと後から取り返しがつきません。リーフレットが冒頭で「!」を付けて書いているのもそこです。

研究所が作れそうなもの、作れないもの

作れないもの。「あなたは延長できます/できません」という判定。条文が「公共職業安定所長が認める場合に限る」と書いている以上、認めるのはハローワークであって、研究所ではありません。

作れないもの、その2。申請の代行や、書き方の指南。申告書の理由欄に何を書けばよいか、という話には踏み込みません。

作れそうなもの。この記事で数えた「境目の日」(子が生まれた日から、どちらの条件になるかを見るところ)と、「1歳に達する日」の数え方は、暦の計算だけで決まります。判定はせずに、日付だけを並べて見せる小さな紙にはできそうです。作れるかどうかはまだ分かりません。それより先に確かめたいのは、この日付の並びが本当に要るのかどうかのほうです。

確かめたこと/確かめていないこと

読んだもの雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)と育児・介護休業法施行規則(平成3年労働省令第25号)の全文、雇用保険法第61条の7・第61条の10、育児・介護休業法第5条・第6条・第8条の条文(いずれもe-Gov法令検索のAPIから取得)。厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります」(PDF)、「保育所等に入所できない場合の育児休業給付金の支給対象期間延長について」(PDF)、「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書(手書用)」(PDF)。まとめのページはこちら。読んだ日は2026年9月11日
数え方2つの省令の全文XMLに対して「当面その実施が行われない」という文字列を検索し、前後の条番号・号番号を機械で拾ったもの(雇用保険法施行規則3件・育児・介護休業法施行規則4件)。準用の2か所は条文を読んで足しました。「速やかな職場復帰」も同じ方法で数えました(雇用保険法施行規則1件・育児・介護休業法施行規則0件)。境目の日は、附則第2項の「施行日以後にその子が一歳に達する」と、リーフレットの注記「1歳に達する日=1歳の誕生日の前日」から逆算したものです
確かめたこと第101条の25第1号に「速やかな職場復帰を図るために……公共職業安定所長が認める場合に限る」という括弧書きがあること(条文の実測)。育児・介護休業法施行規則第6条第1号の同じ一文にその括弧が無いこと(実測)。括弧を付けたのが令和6年3月25日厚生労働省令第47号であり、施行日が令和7年4月1日であること、附則第2項が適用の範囲を「施行日以後にその子が一歳に達する被保険者」としていること(附則の実測)。雇用保険法第61条の7第2項が「3回目以後の育児休業には給付金を支給しない」と定めており、第101条の29の2がその例外であること(条文の実測)。申告書の3枠目に8つの問いがあり、⑧の理由の選択肢が5つあること(様式の実測)。この記事に載せたURLが、読んだ日にすべて開けること(実測)
確かめていないことなぜ片方の省令にだけ括弧が付いたのか(省令の改正理由そのものは読んでいません)。育児・介護休業法施行規則の第6条そのものが、2025年4月の前後で変わっていないかどうか(この省令にも令和7年4月1日施行の改正が1本ありますが、どの条を直したのかまでは確かめていません。確かめたのは、いまの条文にあの括弧が無いことと、「速やかな職場復帰」という語が0件であることです)。「休めるが給付金は出ない」という組み合わせが実際にどれだけ起きているか(数字を見つけられませんでした)。延長を申請した人のうち、認められなかった人が何人いるか(公表を見つけられませんでした)。市町村ごとの申込締切(前の記事と同じ理由で、どこかを書かずには確かめられません)。ハローワークの窓口で実際にどう運用されているか。この整理が、いま延長の手続きをしている人の感覚と合っているかどうか
していないこと個別の相談に答えること。延長できるかどうかを判定すること。申告書の書き方を助言すること。実在の自治体名を挙げること

実際に困っている方へ

ここに書いたのは、省令の条文と、厚生労働省が公開しているリーフレット・様式を読んだ結果です。一般的な話であって、あなたの事情は研究所には分かりません。認めるかどうかを決めるのは公共職業安定所長(ハローワーク)で、研究所ではありません。

手続きのことは、勤め先の担当の方か、お住まいの地域のハローワークへ。制度の説明とリーフレット・申告書の様式は、厚生労働省の育児休業給付金の支給対象期間延長手続きのページにあります。

申し込みの締切と、その年の受け入れの決まりは、お住まいの市町村の保育の担当窓口です。「保育所入所のしおり」などの名前で配られている入所案内に書かれています。

ひとつだけ、この記事で読んだ範囲でいちばん取り返しがつきにくいところを書いておきます。市区町村に保育所等の利用を申し込むときに、申込書の写しを取っておくこと。厚生労働省のリーフレットが、冒頭に「!」を付けて書いているのがこれです。電子申請の場合は、申込内容や申し込んだ画面を印刷したものでよいとされています。

元になった声について

この記事は、2026年8月に公開されている場所から拾った1件の声(早生まれの子の保育園入所への不安)から始まった前の記事の続きです。声の文章そのものは残していません。同じことで困っていたら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。