読みもの / 整理と仮説
保育園について法律が書いているのは、「市町村が保育しなければならない」という市町村の義務でした。子を通わせる親の義務は、読んだ国の法令の本則には見当たりませんでした。保育の認定に書かれる時間も「1か月平均275時間まで」のような使える上限です。幼稚園は学校ですが、通わせる義務はまだありません。義務が始まるのは小学校からで、負うのは保護者です。その小学校でさえ、法令は休ませることに「正当な事由」があるかどうかを分けていました。保育園を休むことがのちにどう響くかは、決まりの文書には書かれておらず、研究所にも分かりません。
公開されている書き込みに、こういう声がありました。3歳の子が、保育園に行きたがらない朝がある。親は在宅で働いているので、行きたくない日は休ませて家で一緒に過ごすことがある。それを知った家族からは、休むのが癖になって、小学校に上がってから学校に行かなくなるのではないか、いまのうちに「行くもの」だと教えるべきだ、と言われた。一方で保育園の先生は、保育園は学校ではなく、無理に行かせる場所ではない、と話した。どちらの言い分も分かるので、どうしたらいいか分からない——という内容です。
研究所が確かめたのは、「通わせなければならない」は、どこから始まり、誰が負うのかでした。家族の心配は小学校の話で、先生の話は保育園の話です。2つは、決まりの上では別の場所の話かもしれません。今回は国の法律・政令・省令と、国の指針・通知・FAQを読みました。
保育園を休むことが、のちに学校へ行かなくなることにつながるかどうかは、研究所には分かりません。今回読んだのは決まりの文書で、その問いに答える研究にはあたっていません。この記事は、休ませるのがよいとも、行かせるべきだとも言いません。
保育園(保育所)の決まりの土台は、児童福祉法 第24条です。
市町村は、この法律及び子ども・子育て支援法の定めるところにより、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、次項に定めるところによるほか、当該児童を保育所(…)において保育しなければならない。
(児童福祉法 第24条第1項)
「しなければならない」の主語は市町村です。保育所そのものは、第39条で「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設」と書かれています。「日々通わせて」は施設の目的の書き方で、親に通わせる義務を課す形にはなっていません。
保護者を主語にした条文も、児童福祉法と子ども・子育て支援法の本則から全部拾って読みました。いちばん広いのは児童福祉法 第2条第2項の「児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う」で、これは育てることの責任の条文です。保育園に通わせることには触れていません。子ども・子育て支援法で保護者に「しなければならない」と書いてあるのは、認定を申請して受けること(第20条第1項)と、認定の期間中に働き方などの状況を届け出ること(第22条)でした。
1か所だけ、通うことに近い言い方があります。子ども・子育て支援法 第27条第2項の「保護者は、(…)特定教育・保育施設に支給認定証を提示して当該支給認定教育・保育を当該教育・保育給付認定子どもに受けさせるものとする」です。ただし主語は、保育を「受けようとする」保護者で、書かれているのは認定証を見せて受けるという受け方です(緊急のときなどは除く、というただし書きが付いています)。何日受けさせるかは書かれていません。
念のため、語でも数えました。児童福祉法、子ども・子育て支援法、その施行規則、保育所や園の運営の基準2本(下の「確かめたこと」の表に書名)の本則で、「欠席」は5本とも0件でした(「登園」は1件だけで、認可外の施設の健康観察の基準の中でした)。数え方が働いているかを確かめるために、同じ方法で学校教育法の「就学させる義務」を数えると、第17条が1か条拾えます。
保育園を使うには、市町村の「保育の必要性」の認定を受けます。そのとき決まる「保育必要量」は、法律の定義では、給付費を支給する保育の量です(子ども・子育て支援法 第20条第3項)。中身は施行規則 第4条にあります。
保育必要量の認定は、保育の利用について、一月当たり平均二百七十五時間まで(一日当たり十一時間までに限る。)又は平均二百時間まで(一日当たり八時間までに限る。)の区分に分けて行うものとする。
(子ども・子育て支援法施行規則 第4条第1項)
書いてあるのは「まで」、つまり使える量の上限です。「これだけは通わなければならない」という下限は、この条にはありません。
認定の理由になる事由(施行規則 第1条の5)は保護者の側の状態です。働いている場合は「1か月に48〜64時間の範囲で市町村が決める時間以上、労働することを常態とすること」(第1号)と書かれていて、働く場所(家の中か外か)については書かれていません(施行規則の本則で「居宅内」「居宅外」は0件でした)。在宅で働く人の認定を市町村がどう扱っているかは、今回は確かめていません。
条文には無くても、国が事業者や保育士に向けて書いた文書には「欠席」が出てきます。今回見つけたのは2か所です。
1つ目は、事業者向けFAQ(子ども・子育て支援新制度 事業者向けFAQ【第7版】、平成27年3月)の Q24 です。問いは「病気等で長期にわたって欠席する場合」に、給付費と利用者負担(保育料)がどうなるか、です。答えはこうです。
短期間の一時的な欠席については、通常は「利用」に当たり、給付費と利用者負担が発生します。他方、長期間にわたる継続的な欠席については「利用」に当たらないため、退所(園)により給付費と利用者負担は発生しないと考えられます。
(事業者向けFAQ【第7版】Q24 の答え④。同じ答えの冒頭には「欠席・退園等の形式は各施設・事業所により運用実態が異なる」とある)
この答えから言えるのは、短く休む日があっても、園を「利用」していることに変わりはないということと、長く続けて休むと「退所」として扱われることがあるということです。ただし、これは病気などで長く休む場面への答えです。また、このFAQは2019年10月の幼児教育・保育の無償化の前に書かれたものなので、利用者負担(保育料)がいまどうなるかは、この答えからは言えません(3歳の子の保育料は、研究所の無償化の記事に書いています)。「長期間」が何日なのかは書かれておらず、扱いは施設や市町村によって違う、とFAQ自身が書いています。
2つ目は、保育所保育指針解説(平成30年2月)です。指針の本文(告示)には「欠席」は0件で、解説で出てくるのは1か所だけでした。虐待の早期発見の節(第3章 1(1)ウ の解説)で、保護者や家族の状態を把握するための視点のひとつとして「理由のない欠席や早退、不規則な登所時刻」が挙がっています。書かれているのは「理由のない」欠席で、休むことそのものではありません。
幼稚園は学校教育法の「学校」です(第1条)。満3歳から入れます(第26条)。それでも、通わせる義務の条文はありません。幼稚園について時間の下限があるのは、園の側です。
幼稚園の毎学年の教育週数は、特別の事情のある場合を除き、三十九週を下つてはならない。
(学校教育法施行規則 第37条)
39週は園が開く週の数の下限で、子どもが出る日数の下限ではありません。
「通わせなければならない」が条文に出てくるのは、小学校からです。
| 書いてあること | どこに | |
|---|---|---|
| 誰が負うか | 保護者が、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う | 学校教育法 第16条 |
| いつから | 子が満6歳に達した日の翌日以後の、最初の学年の初めから、小学校に就学させる義務 | 同 第17条第1項 |
| 休みが続いたら | 校長は、休業日を除き引き続き7日間出席しないなど出席の状況が良くない場合で、出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、教育委員会に知らせる | 学校教育法施行令 第20条 |
| その後 | 教育委員会は、保護者に出席を督促する。督促を受けてなお義務を果たさない者には罰金の定めがある | 同 第21条・学校教育法 第144条 |
義務を負うのは子どもではなく保護者で、その小学校でも、法令は「休んでいるかどうか」だけでなく「保護者に正当な事由がないと認められるとき」という条件を付けています。
家族の心配は、小学校に上がってからのことでした。そこで、小学校で学校を休んでいる子について国が書いているものを、1段だけ読みました。
2016年の教育機会確保法は、不登校の子(「相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況」にある子。第2条第3号)について、国と自治体が「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」て支援することを書いています(第13条)。この法律の公布の通知(平成28年12月22日)は、国会の附帯決議として「不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること」があったことを書き添えています。
2019年の文部科学省の通知は、支援の考え方をこう書いています。片方だけを引かないよう、一文まるごと写します。
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。
(「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日 元文科初第698号 記1(1))
国は、休む時期が意味を持つことも、休むことに不利益やリスクがあることも、両方書いています。これは小学校以降の、不登校の状態にある子についての文書で、保育園の3歳の子に当てはめて書かれたものではありません。
読んだ範囲で、国の決まりがはっきり線を引いているのは2か所でした。
そう読むと、3歳の子を今日休ませるかどうかは、国の決まりが答えを持っている問いではなく、家と園とで決めるように置かれている問いに見えます。
一方で、家族が心配していたのは、休むことが癖になって、小学校で学校に行かなくなるのではないかということでした。これは義務があるかどうかの問いではなく、子どもがどう育つかの問いで、決まりの文書の外にあり、研究所が確かめた範囲の外にもあります。この記事は、その心配が当たっているとも外れているとも言えません。
保育園で決まりの側から効いてくるかもしれないのは、長く続けて休んだときの在籍の扱い(FAQの言う「退所」)と、市町村の認定の運用です。どちらも国の文書は施設や市町村によると書いていて、ここから先は町ごとに違います。
| 読んだもの | 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第2条・第10条の2・第24条・第39条(e-Gov法令検索)。子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第19条・第20条・第22条・第23条・第27条(同)。同法施行規則(平成26年内閣府令第44号)第1条の5・第4条(同)。特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)(同・語を数えただけ)。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)(語を数えただけ)。学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条・第16条・第17条・第22条・第26条・第144条(同)。学校教育法施行令(昭和28年政令第340号)第19条〜第21条(同)。学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第37条(同)。義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年法律第105号)第2条・第13条(同)。いずれも e-Gov の法令API から全文を取得し、法令IDは法令一覧APIから引きました。こども家庭庁が掲載している「子ども・子育て支援新制度 事業者向けFAQ(よくある質問)【第7版】」(事業者向けページに掲載のPDF・118頁)Q24。「保育所保育指針」(平成29年厚生労働省告示第117号)と「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(どちらもこども家庭庁の保育のページに掲載のPDF)。文部科学省「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について(通知)」(28文科初第1271号、平成28年12月22日)。同「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(元文科初第698号、令和元年10月25日)記1(1) |
|---|---|
| 数え方 | 法令の全文XMLを <Article> ごとにタグを外して空白を潰し、本則だけを対象にした。児童福祉法・子ども・子育て支援法・同法施行規則・運営に関する基準・設備及び運営に関する基準の5本で「欠席」0件。「登園」は4本で0件、施行規則に1件あったが、第1条=認可外の施設の基準の中の「登園及び降園の際」の健康観察で、通う義務の話ではなかった。同じ方法で、学校教育法の「就学させる義務」は第17条の1か条、学校教育法施行令の「出席」は第19条〜第21条を拾えた。指針と指針解説はPDFを pdftotext -layout で読み、空白を潰して数えた(指針「欠席」0件、指針解説「欠席」1件=印刷の頁で308頁)。FAQは「欠席」が5件で、すべてQ24の問いと答え(目次の再掲を含む)だった。児童福祉法と子ども・子育て支援法の本則では、「保護者は」で始まる文を全部拾って読んだ(児童福祉法の多くは障害児の通所・入所給付の手続き、子ども・子育て支援法は認定の申請・届出・認定証の提示) |
| 確かめたこと | 保育所について「しなければならない」の主語が市町村であること(児童福祉法 第24条第1項)。保育必要量が「まで」で書かれた上限であること(施行規則 第4条)。認定の事由の第1号に、働く場所の定めが無いこと。FAQ Q24 が「病気等で長期にわたって欠席する場合」の問いへの答えで、短期の欠席は「利用」、長期の継続的な欠席は退所と考えられる、としていること。指針解説の「欠席」が、虐待の早期発見の節の「理由のない欠席」であること。幼稚園の39週が園の教育週数の下限であること。就学の義務が保護者にあり、満6歳の翌日以後の最初の学年の初めから始まること。施行令第20条が「正当な事由がないと認められるとき」を条件にしていること。教育機会確保法第13条の「休養の必要性」、公布通知の附帯決議の一文、2019年の通知の記1(1)の一文 |
| 確かめていないこと | 保育園で休むことが、のちの不登校につながるかどうか(決まりの文書には答えが無い。研究にはあたっていない)。在宅で働く人の保育の認定を、市町村がどう扱っているか。「長期間」の欠席で退所になる日数(町や園ごとの決まりで、どこも見ていない)。保育所の入所の決まり(市町村の条例・規則)。認定こども園の決まり(認定こども園法は読んでいない)。事業者向けFAQの第7版より後の版や、別のFAQ(第7版だけを読んだ) |
| していないこと | 個別の相談に答えること。休ませるべきか、行かせるべきかを言うこと。子どもの様子を判断すること。書き込みの文章を再掲すること |
ここに書いたのは、国が公開している法令・指針・通知・FAQを読んだ結果です。一般的な話であって、あなたのお子さんやご家庭の事情は研究所には分かりません。
休ませる日が続きそうなとき、在籍や保育料の扱いは、園と、お住まいの市町村の保育の担当に聞くのが確かです。国のFAQ自身が、欠席や退園の扱いは施設によって違うと書いています(事業者向けFAQ【第7版】Q24)。在宅で働きながら保育園を使うことの扱いも、認定をする市町村に聞けます(認定は市町村が行う。子ども・子育て支援法 第20条)。
行きたがらない様子そのものは、園の先生と話せます。保育所保育指針は、保育所に、日常のさまざまな機会を使って子どもの日々の様子を伝え合い、保護者との相互理解を図るよう努めることを求めています(保育所保育指針 第4章 2(1)ア)。子育てのことを園の外で相談したいときは、市町村の子育ての相談の窓口があります(児童福祉法 第10条の2 は、市町村に「こども家庭センター」の設置に努めるよう求めています。置かれているかどうかは市町村によります)。
保育園の時間の決まりについては、研究所のお迎えの時刻の記事にも書いています。
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