読みもの / 整理と仮説
子どもが熱を出して仕事を休む日のために、法律には「子の看護等休暇」があります。会社は忙しさなどを理由に断ることができず(労使協定で除けるのは、週に2日以下しか働かない人だけ)、休んだことを理由に不利に扱うこともできません。ところが、休んだ日に給料を払うかどうかは、法律に書かれていません。国の通達ははっきり「賃金の支払を義務づけるものではない」と書いていて、国の調査(令和3年)では、この休暇の規定がある事業所の65.1%が無給でした。しかも日数は働く人1人ずつに付くので、1人で子を育てる家は、家としての日数も1人ぶんです。ひとり親への配慮は、国の指針に「望ましい」として1行だけ書かれていました。
公開されている書き込みに、こういう声がありました。子どもと2人で暮らし始めて1か月ほどの父親のところに、保育園から、子どもが熱を出したので迎えに来てほしいと電話が来る。結局3日、仕事を休むことになった。子どもが心配なのと同時に、職場への申し訳なさと、給料が減ることへの不安が一度に来た。看病するのも、休むのも、職場に頭を下げるのも、減った給料を心配するのも、全部自分1人だった——という内容です。
研究所が気になったのは、この4つ(看病・休む・申し訳なさ・給料)のうち、法律がどれを引き受けていて、どれを引き受けていないのかでした。今回は国の法律・省令・通達・指針と、国の調査を読みました。個人の事情に当てはめる計算はしていません。
子の看護等休暇は、育児・介護休業法 第16条の2 にあります。2025年4月の改正で名前が「子の看護休暇」から変わり、範囲が広がりました。
| いまの決まり | どこに書いてあるか | |
|---|---|---|
| どの子のために | 小学校3年生の修了まで(法律の言葉では「九歳に達する日以後の最初の三月三十一日まで」。9歳に達する日は誕生日の前日)。2025年3月までは小学校に上がるまでだった | 法 第16条の2第1項 |
| 何日 | 1年度に5日。対象の子が2人以上なら10日(改正で日数は変わっていない) | 同上 |
| どんなとき | 病気・けがの世話、予防接種・健康診断、感染症による学級閉鎖・出席停止など、入園・卒園・入学の式(太字と式は2025年4月から) | 同上・施行規則 第32条〜第33条の2 |
| 1日より短く | 時間単位で取れる。ただし「始業の時刻から続けて」か「終業の時刻まで続けて」の形 | 法 第16条の2第2項・施行規則 第34条 |
| 会社は断れるか | 断れない。通達は「経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても」拒めず、日を変える権限も無いとしている | 法 第16条の3第1項・通達 第4の4(4) |
| 取れない人 | 労使協定で除けるのは週の所定労働日数が2日以下の人だけ。2025年3月までは「勤めて6か月未満の人」も除けたが、廃止された | 法 第16条の3第2項・施行規則 第36条・第8条第2号(「2日以下」は通達 第4の4(2)イ) |
| 不利に扱われないか | 休暇を申し出たこと・取ったことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない | 法 第16条の4(第16条を準用) |
| 証明書 | 会社は求めることができるが、指針は事後の提出を可能にするなど、過重な負担を求めないよう配慮するとしている | 施行規則 第35条第2項・指針 第二の二(二) |
保育園から電話が来て午後に迎えに行く、という場面は、施行規則 第34条の「終業の時刻まで続けて」の時間単位の形に当たります。ただし、業務の性質から時間単位では取りにくい仕事の人は、労使協定で時間単位だけ外されていることがあります(その場合も1日単位では取れる。法 第16条の3第2項・通達 第4の4(2))。
つまり「休む」ことは、法律が権利としてはっきり引き受けています。会社が断ることも、休んだことを理由に不利に扱うことも、条文で止めてあります。
ところが、第16条の2から第16条の4までのどこにも、休んだ日の賃金の話は出てきません。国が労働局に宛てた施行通達は、この点をはっきり書いています。
「休暇」とは、「休業」と同じく労働契約関係が存続したまま労働者の労務提供義務が消滅することをいい、労働基準法第89条第1号の「休暇」に含まれること。
なお、民法第536条により、休暇期間中の事業主の賃金支払義務は消滅すること。したがって、休暇期間中の労働者に対する賃金の支払を義務づけるものではないこと。
(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について 第4の1(11))
指針も、同じ線を不利益な取扱いの側から引いています。休暇を取った日の、実際に働かなかったぶんの賃金を払わないことは、不利益な取扱いに当たらない。一方で、休んだ日数を超えて働かなかったものとして扱う(たとえば3日休んだのに、それ以上に賞与を削る)ことは、不利益な算定に当たる、としています(指針 第二の十一(三)ニ(イ))。
では給料が出るかどうかは、どこで決まるのか。通達が言うとおり、この休暇は労働基準法 第89条第1号の「休暇」に含まれます。第89条は、常時10人以上を使う会社に、休暇と賃金の決まりを就業規則に書いて届け出ることを求めています。給料が出るかどうかは、勤め先の就業規則(または労働契約)で決まる、ということです。
勤め先の決まりに任された結果がどうなっているか、国が数えた調査があります。先に分母を書きます。厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」の事業所調査で、常用労働者5人以上の事業所(6,300事業所に配り、3,683事業所が回答)、令和3年10月1日現在の状況です。そのうち子の看護休暇制度の規定がある事業所だけを100として、休暇を取った日の賃金の扱いを聞いています。
| 調査の年 | 有給 | 一部有給 | 無給 |
|---|---|---|---|
| 平成24年度 | 26.2% | 13.0% | 60.0% |
| 平成30年度 | 28.0% | 6.2% | 65.2% |
| 令和3年度 | 27.5% | 7.4% | 65.1% |
(平成24年度は事業所全体、平成30年度と令和3年度は規定がある事業所が分母。平成24年度・30年度には「不明」が1%未満ある。)
読むときの注意を3つ書いておきます。
言えるのは、制度の規定がある事業所でも、およそ3つに2つは、休んだ日の給料が出ない決まりだった、というところまでです。この割合は、平成30年度から令和3年度でほとんど動いていません。
給料が出る休みとしては、年次有給休暇(年休)があります。こちらは労働基準法 第39条で、雇われた日から6か月続けて勤め、8割以上出勤した人に、10労働日の「有給休暇」を与えることになっています。
2つを並べると、形が見えます。
暮らしが変わった直後に仕事を変えた人や、勤め始めたばかりの人は、「取れるが給料が出ないかもしれない休み」と「給料は出るがまだ無い休み」の間に立つことになります。
育児休業や介護休業には、雇用保険から給付金が出ます。子の看護等休暇はどうか。雇用保険法の本則を全文で取り、「看護」の語を数えると0件でした(数え方が働いているかを確かめるために同じ方法で数えた「育児休業給付金」は7か条、「介護休業給付金」も7か条で拾えています)。
健康保険の傷病手当金(健康保険法 第99条)は、「被保険者が療養のため労務に服することができないとき」に出るもので、働く本人の病気やけがの療養が対象です。子の看病で休んだ日は、この条の主語に当たりません。
読んだのはこの2本の法律(雇用保険法は本則だけ)です。自治体が独自に出している支援や、会社が有給にしたときに国が会社側に出す助成があるかどうかは、今回は調べていません。
通達は、日数の付き方をこう書いています。
一の年度において、1労働日を単位として、労働者1人につきその養育する小学校第3学年修了前の子が1人であれば5日間、2人以上であれば10日間の子の看護等休暇を最低基準として保障したものであること。
(同 通達 第4の1(1))
日数は家ではなく、働く人1人ずつに付きます。親が2人とも雇われて働いていて、2人ともこの休暇を取れる家なら、子が1人でも家として最大10日。1人で子を育てる家では、家としての日数も5日です。法律の日数に、ひとり親かどうかの区別はありません。
ひとり親について国が書いているのは、次の1行でした。
ロ 労働者がひとり親家庭の親である場合であって、当該労働者が希望するとき 子の看護等休暇等の付与日数に配慮すること。
(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針 第二の五の三(三)。柱書きは「次のイ及びロに掲げる場合に応じて、それぞれイ及びロに掲げる対応を行うことが望ましいこと」)
読むときに気をつけたいのは2つです。
つまり、ひとり親への日数の配慮の1行は、義務として意向を聞く2つの時期の配慮の中に書かれています。それ以外の時期に本人が申し出たときについて指針が書いているのは、「意向を確かめることが望ましい」までで、そのときに日数の配慮まで求めているとは書かれていません。読んだ範囲で言えるのはここまでです。
書き込みの4つの重さに戻ります。
研究所の読みはこうです。この制度は、「休める」ところまでを法律で、「休んでも暮らせる」ところは勤め先の決まりに任せています。親が2人いて、どちらかの勤め先が有給だったり、日数を2人で分けられたりする家では、この差は家の中で吸収されることがあります。1人で子を育てる家では、差がそのまま給料の減りとして出る。書き込みの人が「全部自分」と感じた重さのうち、少なくとも「給料」と「日数」の2つは、個人の頑張りの問題ではなく、制度がどこで線を引いたかの問題だと考えています。
ひとり親への配慮が書かれた場所にも、同じ形があります。国は配慮の中身(日数)まで書いたのに、それを確かめる義務の機会は「出産のとき」と「子が3歳になる前」に置かれていて、「ひとり親になったとき」には置かれていませんでした。暮らしが変わった瞬間に、会社のほうから聞かれる形にはなっていない。そのぶん、疲れているときに本人が言い出さなければならない形になっている、と研究所は見ています。
| 読んだもの | 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第6条・第16条・第16条の2〜第16条の4・第21条・第23条の3・第52条の2〜第52条の5(e-Gov法令検索)。同法施行規則(平成3年労働省令第25号)第8条・第32条〜第37条・第75条の8(同)。労働基準法(昭和22年法律第49号)第39条・第89条(同)。雇用保険法(昭和49年法律第116号・本則を語で数えた)(同)。健康保険法(大正11年法律第70号)第99条(同)。いずれも e-Gov の法令API から全文を取得し、法令IDは法令一覧APIから引きました。施行通達「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」(職発0120第2号・雇均発0120第1号、令和7年1月20日。厚生労働省の育児・介護休業法についてのページに「令和7年10月1日」版として掲載のPDF)第4の1(1)(6)(11)(12)・第4の4・第9の2と6。指針(平成21年厚生労働省告示第509号、同ページ掲載の令和7年10月1日の改正後全文)第二の二・第二の五の三・第二の十一。厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」事業所調査 結果概要(表23)・報道用発表資料(調査の時期と対象)。同じ調査の令和4〜7年度の結果概要(看護休暇の賃金の設問があるかを見るためだけ)。厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(令和7年4月1日から段階的に施行)1頁 |
|---|---|
| 数え方 | 法令の全文XMLを <Article> ごとにタグを外して空白を潰し、本則だけを対象にした。育児・介護休業法の第16条の2〜第16条の4に「賃金」の語は0件(同じ法律で「賃金」が拾えることは第21条の2で確かめた)。雇用保険法の本則で「看護」0件(同じ方法で「育児休業給付金」7か条・「介護休業給付金」7か条)。調査のPDFは pdftotext -layout で読み、令和4〜7年度の結果概要(企業調査・事業所調査)では「看護」が0件だった |
| 確かめたこと | 子の看護等休暇の対象・日数・理由・時間単位・拒めないこと・労使協定で除ける人(週2日以下だけ)・不利益取扱いの禁止が、上の条文にあること。通達が「賃金の支払を義務づけるものではない」とし、この休暇を労基法第89条第1号の「休暇」に含むとしていること。指針が、休暇を取った日の賃金を払わないことは不利益な取扱いに当たらず、休んだ日数を超えて働かなかったものとして扱うことは当たるとしていること。令和3年度の調査で、規定がある事業所のうち無給65.1%・有給27.5%・一部有給7.4%であること。通達が日数を「労働者1人につき」と書いていること。指針が、ひとり親で希望する場合に付与日数に配慮することを「望ましい」としていること、それが法第21条第3項の意向の配慮の節にあること。意向の確認が義務になる時期が、法第21条第1項・第2項と、法第23条の3第5項・第6項(施行規則第75条の8の1年間)であること |
| 確かめていないこと | 2025年の改正のあとの、賃金の扱いの割合(令和4〜7年度の結果概要には見当たらなかった。付属の統計表までは見ていない)。事業所の規模ごとの有給・無給の割合(付属統計表第26表にあるはずだが、取っていない)。ひとり親に日数を足している会社がどれくらいあるか(国が数えた表は探していない)。雇用保険法施行規則・健康保険法施行規則(本則だけを読んだ)。自治体や国の、会社側・本人側への助成や支援(調べていない)。子の病気の日の預け先(病児保育)(今回の主題から外した) |
| していないこと | 個別の相談に答えること。特定の会社の決まりの良し悪しを言うこと。書き込みの人の休んだ日や給料を計算すること。書き込みの文章を再掲すること |
ここに書いたのは、国が公開している法令・通達・指針・調査を読んだ結果です。一般的な話であって、あなたの勤め先の決まりや事情は研究所には分かりません。
看護等休暇の日に給料が出るかどうかは、勤め先の就業規則(または労働契約)で決まります。常時10人以上が働く会社には就業規則を作る義務があり、休暇と賃金はそこに書く事項です(労働基準法 第89条)。まず就業規則の「子の看護等休暇」の所を見てください。
休暇そのものは、会社は断れません(育児・介護休業法 第16条の3)。お迎えの電話で午後から抜けるときは、時間単位(終業の時刻まで続けて)で取れることになっています(同 第16条の2第2項・施行規則 第34条)。証明書を求められたときは、指針が事後の提出を可能にするよう会社に求めています(指針 第二の二(二))。
ひとり親であることを、勤め先に伝えて相談することはできます。国の指針は、会社が働く人の意向を聞く場面で、ひとり親で本人が希望するときは、日数に配慮することを「望ましい」としています(指針 第二の五の三(三)ロ)。また、働く人から申出があったときにも意向を確かめることが望ましい、としています(同(一))。どちらも義務ではないので、日数を足すかどうかは会社しだいです。
休暇を断られた、休んだことで不利に扱われた、というときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます(育児・介護休業法 第52条の4 は、こうした争いについて都道府県労働局長が助言・指導・勧告をできるとしている)。ひとり親としての暮らしのこと(手当や支援)は、お住まいの市町村の窓口で聞けます。
休みの取り方については、研究所のお迎えの時刻の記事や「配慮してほしい」の入口の記事にも関係する話を書いています。
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