読みもの / 整理と仮説
2025年4月から、家族が「介護を必要とする状況に至った」ことを会社に伝えると、それは育児・介護休業法 第21条第4項の「申出」になります。書面でなく口頭でもよい、と国の通達は書いています。申出を受けた会社は、介護休業などの制度を知らせ、どうしたいかを確かめなければなりません。そして申出をしたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(同条第6項)。国の指針は、その「不利益な取扱い」の例の2番目に、期間を定めて雇われている人の契約を更新しないこと(雇止め)を挙げています。通達は、申出をきっかけ(契機)として行われた取扱いは、原則として申出を理由にしたものと解する、としています。留保は2つあります。①通達は、業務上の必要性が本人の受ける不利益を上回る「特段の事情」があるときなどは別だとしていて、1か月休まれると困る、という会社の言い分はここに入ります。②入院した子への付き添いが、この法律の「介護」に当たるかは、国の文書に名指しされていません。通達の例は「骨折で歩行や食事の手助けが要るようになった」で、乳幼児の通常の成長の中での世話は含まれない、とも書かれています。
公開されている掲示板に、こういう投稿がありました(2026年5月・本人の投稿)。3か月ごとに契約を更新するパートで3年働いてきた。子どもが入院することになり、付き添いで1か月ほど休む必要があるので、前もって職場に相談した。現場のまとめ役からは「大丈夫」と言われたが、そのあと、経営者の判断で次の契約は更新できないと告げられた。
返事は割れていました。「3か月契約なら30日前の予告も要らない」「3年続けていれば更新を期待してよいし、子どもの看護なら会社に配慮の義務がある」「3か月の契約で1か月休むなら仕方がない」。同じ時期に、子どもの肺炎の付き添い入院で1週間休んでいて、次の更新はされないかもしれない、と書いた派遣の人もいました。
研究所が答えるのは、返事が割れた点です——子どもの入院の付き添いで休みたいと伝えたことは、法律の上で何かになるのか。それを理由に契約を切ることについて、決まりは何を書いているか。その会社の判断が違法かどうかには答えません。それを決めるのは、後で書く労働局や裁判所で、研究所ではありません。
| 休みの形 | 決まり |
|---|---|
| 子の看護等休暇 | 小学3年生の修了までの子1人につき年5日(2人以上で10日)。子の病気・けがの「世話」には病院への付添い等も含まれると通達が書いている(第4の1(7))。会社は断れない。ただし1か月は覆えない(くわしくは看護休暇の記事) |
| 介護休業 | 「対象家族」に子は入る(法 第2条第4号)。対象家族1人につき通算93日・3回まで。ただし、その家族が「要介護状態」=2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態であることが要る(法 第2条第3号・施行規則 第2条)。雇用保険の介護休業給付がある |
| 介護休暇 | 要介護状態の対象家族1人につき年5日(2人以上で10日)。世話には「通院等の付添い」が入る(施行規則 第38条)。介護休業と同じく要介護状態であることが要る(法 第16条の5) |
| 年次有給休暇・欠勤・会社独自の休職 | 育児・介護休業法の外。会社の就業規則と労働基準法による |
「常時介護を必要とする状態」は、通達の別添1「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」で判断します。座っていられるか・歩けるか・食事や排泄や着替えにどれだけ手助けが要るか、など12の項目があり、状態が「2」(一部の手助け・見守りなど)の項目が2つ以上か、「3」(全面的な手助けなど)が1つ以上で、その状態が続くと認められること(または介護保険の要介護2以上)、が線です。いまの版では冒頭に、障害のある子や医療的ケアの要る子を介護・支援する場合を含むこと、「乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない」ことが書かれています(古い版にはこの一文がありません)。2週間という期間は「常時介護を要する状態が一時的な、日常的にかかり得る傷病による場合を除く趣旨」だ、と通達は説明しています(第1の2(3)ロ)。
判断基準の中で「入院」「病院」を数えると0件でした(同じ数え方で「障害児」は4件拾えます)。「付き添い」は1か所だけあり、注3の、状態「2」の中身の説明です——「見守り等」とは「常時の付き添いの必要がある『見守り』」や、障害のある人などに必要な「確認」「指示」「声かけ」などをいう。これは座っていられるか・食事や排泄はどうか、という項目ごとの手助けの度合いの話で、入院中の子に付き添うことがこれに当たるかは書かれていません(乳幼児の通常の成育過程の除外も掛かります)。入院している子に付き添うことが、ここで言う「介護」に当たるかは、名指しされていません。通達は「介護」を「歩行、排泄、食事、見守り等の日常生活に必要な便宜を供与する」ことと書いています(第1の2(2)イ)。判断基準はまた、この基準に厳密に従うことにとらわれて取得が制限されないよう「事業主は柔軟に運用することが望まれます」とも書いています。なお、国のQ&Aは介護休業を「要介護状態にある対象家族の介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するもの」と位置付けています(令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A・令和7年9月24日時点 A4-14)。自分が付き添い続けるための休みとして作られた形ではない、ということも、この組み合わせの読みにくさの一つです。
期間を定めて雇われている人が介護休業を申し出られるのは、休業を始める日から数えて93日を過ぎた日から、さらに6か月の間に、契約が終わることが「明らかでない」人です(法 第11条第1項ただし書。契約が更新される場合は更新後の契約で見る、と通達 第3の1(1)が書いている)。通達は、会社が「更新しない」と明示していないなら、原則として「更新がないことが確実」とは判断しない、としています(第2の1(7)ホ。第3の1(5)ハで介護休業も同じ)。3か月ごとの契約であることだけでは外れない、ということです。
ただし、ここには順番が効きます。判断は申出のときに分かっている事情で行い、そのとき見る「事業主の言動」は、実際に更新を決める権限を持つ人の言動だ、と通達は書いています(第2の1(7)ロ・ヘ)。権限のある人がすでに「更新しない」と告げたあとに申し出ると、この線に掛かりうる、ということです。
介護休業を取る前、休みたいと伝えた段階で、法律は動いています。2025年4月に施行された第21条第4項です。
事業主は、労働者が当該事業主に対し、対象家族が当該労働者の介護を必要とする状況に至ったことを申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、介護休業に関する制度、仕事と介護との両立に資するものとして厚生労働省令で定める制度又は措置…その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、…当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
(育児・介護休業法 第21条第4項)
事業主は、労働者が第一項若しくは第四項の規定による申出をしたこと又は第二項の規定により確認された意向の内容を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(同 第6項)
通達は、この申出を次のように説明しています(第9の3(3)(5)(7))。
この節の中で「要介護状態」は0件でした(同じ数え方で「申出」は19件)。第21条第4項の申出に、介護休業と同じ「2週間以上の常時介護」まで要るのかは、書かれていません。国のQ&A(令和7年9月24日時点)も、口頭でよいこと(A4-3)は答えていますが、この点には答えていません(「介護に直面」13件のうち、要件を問う問いは無く、「入院」「子の介護」「障害児」は0件)。一方で「介護」の意味は介護休業と同じだ、とも書かれています。だから、子どもの入院の付き添いを伝えることが第4項の申出に当たるかは、ここでも名指しされていない、が国の文書から言えることです。
国の指針(平成21年厚生労働省告示第509号)第二の十一は、第16条(介護休業)や第21条第6項などで禁じられた取扱いについて書いた節で、見出しに「対象家族が労働者の介護を必要とする状況に至ったこと」の申出も並んでいます。
解雇その他不利益な取扱いとなる行為には、例えば、次に掲げるものが該当すること。
イ 解雇すること。
ロ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと(以下「雇止め」という。)。
(指針 第二の十一(二))
「理由として」をどう見るかは、通達が書いています(育児休業の第2の39(3)。第21条第6項も同じ扱い=第9の5(2))。
育児休業申出又は育児休業の取得をしたことを契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として育児休業申出又は育児休業の取得をしたことを理由として不利益取扱いがなされたと解されるものであること。
(中略)なお、「契機として」については、基本的に育児休業申出又は育児休業の取得をしたことと時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること。
ただし、この「原則」には例外が2つ付いています。①円滑な業務運営や人員の適正配置などの業務上の必要性から支障があってやむを得ない場合で、その必要性が、本人の受ける不利益を上回ると認められる「特段の事情」があるとき。②本人が同意していて、有利な影響が不利な影響を上回り、適切に説明されているなど、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的にあるとき。指針も、事業の縮小などで同じ立場の人を全員雇止めする場合などは、休業中の人の雇止めが不利益取扱いに当たらない可能性が高い、としています(第二の十一(三)イ)。
掲示板の「3か月の契約で1か月休むなら仕方がない」という返事は、この①の例外の側の言い分にあたります。どちらに当たるかを決める一文は無く、事情を聞いて判断される作りです。
掲示板で割れていた「30日前の予告は要るのか」は、労働基準法 第14条第2項に基づく告示(有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準・平成15年厚生労働省告示第357号)に書いてあります。
使用者は、有期労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。…)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の三十日前までに、その予告をしなければならない。
(同 第2条)
契約の長さ(3か月)ではなく、更新の回数(3回以上)か、通算の勤続(1年超)で決まります。また、更新しない理由の証明書を請求したら、遅滞なく交付しなければならない(第3条)。この基準について、行政官庁(労働基準監督署)は使用者に助言・指導ができます(労働基準法 第14条第3項・厚生労働省のリーフレット)。
雇止めそのものが有効かどうかは、別の法律の線です。労働契約法 第19条は、反復して更新されてきた契約や、更新を期待することに合理的な理由がある契約について、雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、労働者の申込みにより同じ条件で更新したものとみなす、と定めています。これは最後は裁判所で決まる線です。(掲示板に出ていた「5年で無期に」は同じ法律の第18条で、通算5年を超えた場合の別の話です。)
研究所の読みはこうです。法律の守りは「休んだ日数」ではなく「伝えたこと」に掛かっている。2025年4月から、介護休業を申し出る前の「介護が要る状況になった」と伝えた段階で、不利益な取扱いの禁止が付きました。ところが掲示板の返事は「3か月の契約で1か月」という休む長さで議論していて、それは通達の言う「業務上の必要性」の例外の側の材料です。どちらも半分ずつ当たっていて、どちらに傾くかは、事情を聞いて判断される場で決まる、という作りだと思います。
もう1つ。法律の休みは「子の状態」で線が引かれているのに、付き添いは「病院の体制」で決まっている。子の看護等休暇は短い病気・けが(年5日)、介護休業は常時介護の要る状態(2週間以上)。入院した子の付き添いは、前の晩に読んだとおり病院の求め(医師の許可)で決まるもので、子の状態の物差しで測られていません。1か月の付き添いは、その2つの物差しの間に落ちうる。だから「付き添いのための休みを申し出た」ことが、法律のどの申出に当たるのかが、はっきりしないのだと思います。
| 読んだもの | 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号・e-Gov法令検索)第2条・第11条・第16条・第16条の4・第16条の5・第21条・第52条の2〜第52条の5。労働契約法(平成19年法律第128号・同)第18条・第19条。労働基準法(昭和22年法律第49号・同)第14条。いずれも e-Gov の法令API から全文を取得。厚生労働省「育児・介護休業法について」の頁に掲載の、通達「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」(令和7年10月1日版・209頁)第1の2・第2の1(5)(7)・第2の39・第3の1・第4の1(7)・第9の3・第9の5・別添1、指針(平成21年厚生労働省告示第509号・令和7年10月1日の改正後全文)第二の十一、「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(新旧2つのPDF。新しいほうは字が取れないので頁を画像にして読んだ)。「令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A」(令和7年9月24日時点・36頁)A4-1〜A4-14。「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号・令和5年改正後)。厚生労働省のリーフレット「有期労働契約の締結、更新及び雇止めをめぐるトラブル防止のために」 |
|---|---|
| 数え方 | PDFは pdftotext -layout で文字にし、空白を潰して数えた。法の本則:「付き添」0・「付添」0・「入院」0(陽性対照「介護休業」126)。判断基準(通達 別添1):「入院」0・「病院」0(陽性対照「障害児」4・「成育過程」1)、「付き添」1(注3「常時の付き添いの必要がある『見守り』」)。通達 第9の3(第21条第4項の節):「要介護状態」0・「入院」0(陽性対照「申出」19)。通達全体では「付き添」1(上の注3)・「付添」2で、「付添」は子の看護等休暇の「世話」(第4の1(7)「病院への付添い等も含まれる」)と介護休暇の「世話」(則第38条「通院等の付添い」)。令和6年改正のQ&A:「介護に直面」13・「要介護状態」3(どれも申出の要件を問うものではない)・「入院」0・「子の介護」0・「障害児」0。走査は研究所のリポジトリの research/data/tsukisoi-koshin.py |
| 確かめたこと | 上の条文と、通達・指針・告示の一文がそのとおりにあること。判断基準の冒頭の「障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において…は含まない」が通達の第1の2(2)・第3の1(1)などにも同じ形であること。第21条第4項の申出が口頭でもよく、有期の人も別の要件なしに対象になること。第52条の2の範囲に第2章〜第8章と第21条が入り、第52条の4・第52条の5の対象になること |
| 確かめていないこと | 入院した子への付き添いが「介護」に当たるかを書いた国の文書が、ほかにあるか(令和6年改正のQ&Aは読んだが無かった。平成21年・28年のQ&Aやパンフレットは読んでいない)。判断基準の新しい版がいつ差し替わったか(通達に別添として付いているのは確かめたが、改正の日付は追っていない)。労働契約法第19条の裁判例。介護休業給付の要件(雇用保険法) |
| していないこと | その会社の雇止めが違法かどうかを言うこと。どの休みが取れるかを判定すること。声の文章を再掲すること |
ここに書いたのは、国の法律・通達・指針・告示を読んだ結果です。一般的な話であって、あなたの場合にどうなるかは、研究所には分かりません。
入院の付き添いで休みが要ると伝えるときは、「子どもの入院で、付き添いや身の回りの世話が必要になった」という事実と、その期間の見込みを伝えておくと、話が噛み合いやすくなります。通達は、申出の効果は事業主(権限を委任された人がいればその人)に届いたときに生じる、としています(第2の1(5)。第21条第4項も同じ=第9の3(6))。現場の責任者が権限を委任されているかは職場によるので、人事や契約を決める側にも届く形にしておくと確かです。第21条第4項の申出は口頭でもよいとされていますが、あとで「いつ・誰に伝えたか」を確かめたくなることがあります。会社には、介護休業などの制度を知らせ、意向を確かめる義務があります(それが入院の付き添いに当てはまるかは、上に書いたとおり名指しされていません)。
更新しないと告げられたら、次のことができます。
| できること | 決まり・窓口 |
|---|---|
| 更新しない理由の証明書を求める | 会社は遅滞なく交付しなければならない(告示 第3条) |
| 30日前の予告が無かった | 3回以上更新・または1年超の勤続なら予告が要る(告示 第2条)。労働基準監督署が助言・指導できる(労働基準法 第14条第3項) |
| 休みを伝えたことを理由に切られたのでは、と思う | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)。労働局長が助言・指導・勧告をでき(育児・介護休業法 第52条の4)、調停も申請できる(第52条の5)。援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いも禁じられている(第52条の4第2項で第25条第2項を準用) |
| 雇止めそのものの有効性を争う | 労働契約法 第19条。最後は裁判所が判断する |
子の看護等休暇(年5日・病院への付添いを含む)は会社が断れない休みで、くわしくは看護休暇の記事に、付き添いが必須かどうかは付き添いの記事に、付き添いの個室の部屋代は部屋代の記事にまとめてあります。
この記事は、公開されている掲示板の投稿1件と、それへの返事を読んで書きました。投稿の文章そのものは残していません(研究所が持っているのは1行の要約と元のURLだけです)。同じことで困っていたら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。