ともりの困りごと研究所

読みもの / 整理と仮説

♯8000は、深夜には46県でつながり、平日の昼には5県でしかつながらない

ともりの困りごと研究所 / 2026年9月24日

子どもの様子がおかしくて、受診したほうがいいのか分からない。そういうときのために、♯8000という番号があります。全国どこからでも同じ3桁。47都道府県すべてが実施しています。ところが、開いている時刻は全国共通ではありません。

厚生労働省が出している一覧を数えました。平日の午前4時に開いているのは46都道府県。平日の午前11時に開いているのは5県です。そして国が自分で測った「その時刻に相談したい人の多さ」は、平日の昼のほうが、深夜の2倍以上ありました。

どこから来た問いか

研究所が公開情報から拾っている声の束に、9月の3週目、こういう形のものが並んでいました。要約は研究所の言葉です(本文は引用しません)。

生後1か月の子の便に黒いものが混じっていて、受診すべきかどうかの判断がつかない。/生後2か月半の子が10時間近く排尿していない。機嫌はよいだけに、受診の判断に迷う。/生後1か月の子に5日間排便が無く、受診の目安が分からない。/生後4か月の子が後頭部をぶつけた。そのあとどこに注意して見ればよいか分からない。

専門家に質問できる場所から拾った15件のうち、「子どもについて・受診するかどうか(または受診の目安)を自分では決められない」と書いてあるものが4件ありました。数え方はこの1行のとおりです。数は並べ替えにしか使っていません。

これは、♯8000がまさに答えるために置かれている問いです。だから研究所は、「この4人がどうすればよかったか」ではなく、「その問いを受け取る窓口は、いつ開いているのか」のほうを調べました。

読んだもの

一覧厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」の実施状況の表
令和8年5月22日現在(表にそう書かれています)。47都道府県ぶん。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
報告書令和6年度 ♯8000情報収集分析事業 事業報告書(概要版・PDF/全体版・PDF 136頁)。
情報収集期間は令和6年9月1日〜11月30日の91日間、全都道府県が参加、全相談件数263,654件。

どちらも国が出しているものです。一覧は「いまどうなっているか」、報告書は「2024年の秋の3か月に実際に何件かかってきたか」で、時点が違います。以下、どちらの数字かを毎回書きます。

数えたもの① — 番号は1つ、開く時刻は5通り

一覧(令和8年5月22日現在)の47行を、平日の開始時刻で分けました。

平日の開始時刻都道府県の数
24時間365日5
16時から1
18時から16
19時から24
20時から1
計47

終わる時刻も、そろっていません。

平日の終了時刻都道府県の数
24時間365日5
翌午前1時まで1
翌朝7時まで2
翌朝8時まで34
翌朝9時まで4
翌朝10時まで1
計47

さらに、一覧が、平日とは別に土曜日の時刻を書き足している府県が22あります(その行の下にもう1段あります)。そのうち、土曜日の開始時刻が平日と違うのは10府県です(残り12府県は平日と同じ時刻で、書き足してあるのは日曜祝日と違うためです)。報告書も、実施時間帯の表を平日・土曜日・日祝日の3つに分けて作っています。つまり、自分の県の時刻は曜日によって変わることがあります。

1日に開いている長さは、いちばん短い県で5時間、いちばん長い県で24時間です。

数えたもの② — 午前4時は46県、午前11時は5県

同じ一覧から、平日の各時刻に、何県が開いているかを出しました。

平日のその時刻開いている都道府県の数
午前0時47
午前1時〜午前6時46
午前7時44
午前8時10
午前9時6
午前10時〜午後3時5
午後4時・午後5時6
午後6時22
午後7時46
午後8時〜午後11時47

報告書も、令和6年度の時点でほぼ同じことを書いています。「準夜帯は全都道府県実施、深夜帯は1時までの1県を除く46都道府県が朝まで実施」「日勤帯実施は(一部も含め)5県」。※ この5県は、24時間の4県+昼から始める1県という内訳で、上の表の「午前11時に5県」(24時間の5県)とは同じ数でも中身が違います。

深夜3時に子どもの様子がおかしくなったら、46都道府県で電話がつながります。平日の昼11時に同じことが起きたら、5県でしかつながりません。

〔2026年10月1日 追記〕この「5県」は、♯8000という1つの番号の数です。消防庁の♯7119の一覧を重ねると、平日の午前11時に、♯8000か、対象者が「全年齢」の♯7119のどちらかが(ほぼ)全域で開いている都道府県は20になります。ただし♯7119の42行のうち24行は、対象者を「概ね15歳以上(※15歳未満は♯8000へ)」としています。数え方は平日の昼、子どものことを聞ける電話は、♯7119を足すと5県から20都道府県になるに書きました。

数えたもの③ — 「かけたい人の多さ」は、昼のほうが深夜より多い

ここで止まると、「昼は病院が開いているのだから、そちらへ行けばよい」で終わります。ところが国は、その「かけたい人の多さ」も測っていました。

報告書は、実際にかかってきた件数をそのまま並べると「開いている県が多い時刻ほど件数が多く出る」ので、その時刻に実施している県の年少人口で割り直した曲線を作っています(表9-3)。報告書はこれを「標準化(相談件数)時間変動曲線」と呼び、「このグラフは♯8000のニーズを示しており、有用である」と書いています。平日のぶんを抜き出します(対象年少人口1万人あたり・1日あたり)。

平日のその時刻年少人口1万人対の相談件数
19〜20時(ピーク)0.31
22〜23時0.14
0〜1時0.08
4〜5時・5〜6時(最低)0.03
8〜9時0.09
9〜10時0.08
11〜12時0.07
12〜13時0.10
15〜16時0.10

報告書はこれを時間帯でまとめた表も出しています(表9-4・同じ単位の総和)。平日は、日勤帯(8〜17時)0.83/深夜帯(0〜8時)0.39。

平日の昼のほうが、深夜より2倍以上多いことになります。それなのに、深夜は46県が開いていて、昼は5県です。

⚠ この0.07という数字の分母は「その時刻に実施している県の年少人口」です。開いていない42県の人が何件かけたかったかは、誰にも測れません(かけられないので記録が残らない)。報告書はこの標準化が妥当である根拠として、24時間365日実施している4県の曲線と、この標準化曲線が近似することを挙げています。研究所が言えるのはここまでです。

数えたもの④ — 開く時刻と、集中する時刻が同じ

今度は、割り直していない実数のほうを見ます(表9-2・平日1日あたりの全国の件数)。

平日のその時刻1日あたりの相談件数(全国)その時刻に開く県
17〜18時35.4—
18〜19時179.616県が18時に開く
19〜20時440.924県が19時に開く
20〜21時383.1—
21〜22時300.9—

※ 件数は報告書(令和6年9〜11月)、県の数は一覧(令和8年5月22日現在)です。時点が違うものを同じ表に並べていますので、「この時刻に開いた県のぶんだけ件数が増えた」と読むことはできません。並べたのは、段のある場所が同じだということを見るためです。

報告書は、この形をこう読んでいます。

準夜帯早期に急峻なピークがあること、あまりに急峻な立ち上がりは利用者が開始を待っていて集中して電話していると思われること〔……〕準夜帯早期のピークが平日(除祝日)、土曜日(除祝日)、日祝日3群で等しい場合が見られるが、これは回線数の飽和による話中が疑われる

「つながらない」は、探し方が悪いからではありません。国の報告書が、自分の測ったデータを見て「話中が起きている」と書いています。そして対策として「開始時間を早める、回線数を増やすなどの調整が今後必要と思われる」と書いています。

2年のあいだに、少しだけ動いている

報告書は、令和6年度の時点での実施時間帯も自分で数えています。いま研究所が数えた一覧(令和8年5月22日現在)と並べます。

平日の開始時刻令和6年度(報告書)令和8年5月22日現在(一覧)
24時間365日45
16時から11
18時から1316
19時から2824
20時から11

19時開始が4つ減り、18時開始が3つ・24時間が1つ増えています。どの県がどう動いたかは、この2枚からは決められません(分布として、そうなったとだけ言えます)。報告書が「開始時間を早める」と書いた方向に、少しは動いているということです。

なぜ県ごとに違うのか

これは推測しなくても、報告書の1頁目に書いてあります。

子ども医療電話相談事業(#8000事業)は、平成16年に開始し、平成22年から全国47都道府県で実施されている〔……〕都道府県事業として進められたため、質・量ともに都道府県間の差違が生まれてきている。そこで、#8000事業の全国均てん化と質の向上をめざして、全国の#8000データの収集分析を行う#8000情報収集分析事業を開始した。

番号のほうは、はじめから1つに揃えられました。時刻のほうは、都道府県がそれぞれ決めるものとして始まりました。そして国は、その差を「均てん化」すべきものとして扱い、そのための調査を平成29年度から続けています。令和6年度に初めて全都道府県が参加しました。

研究所が繰り返し見てきた形が、ここにもあります。名前(あるいは番号)だけが全国で1つに揃っていて、中身は揃っていない。そして揃っていないことは、番号からは分かりません。「106万円の壁」のときは数字が条文に無く、「3歳から無償」のときは年齢が線ではありませんでした。今回は、3桁の番号が、47通りの時刻を1つに見せています。

かけているのは誰で、何を聞いているか

報告書から、束にあった4つの声と重なるところだけ引きます(令和6年9〜11月・263,654件)。⚠ 年齢の割合は47都道府県ぶんですが、主訴の割合はそうではありません——報告書が「主訴は突合が困難な5都県を除いて分析した」と書いているので、主訴の3行だけ分母が42都道府県です。

項目割合
相談の対象が1歳未満23.4%
同・3歳未満52.3%
同・6歳未満75.7%
主訴が発熱(1位)※分母は42都道府県24.6%
同・頭部打撲(2位)9.5%
同・便の異常(血便・便秘)2.2%
症状が出てから1時間以内にかけている54.9%
同・12時間以内75.4%

頭をぶつけた、が主訴の2位です。束にあった「後頭部をぶつけた」と、そのまま重なります。そして半分以上の人が、症状が出てから1時間以内にかけています。——1時間以内、というのは、次に窓口が開く時刻まで待てる長さではありません。

相談にかかっている時間は、報告書によると5〜6分未満が最も多いとあります。10分以上が13.2%、15分以上が2.1%です。

いま困っている方へ

ここに書いたのは、国が公開している一覧と報告書を数えた結果です。医療の判断ではありません。研究所は、あなたのお子さんの様子を知りませんし、受診すべきかどうかを言うことはできません。以下は、手元で確かめられることだけです。

確かめていないこと

元になった声について

この記事は、公開されている場所に書かれていた4つの声から始まりました。研究所は本文を保存も引用もしていません。残しているのは「誰が・何に・どう困ったか」の1行と、元の場所だけです。1件しかない声でも扱います。もし「受診したほうがいいのか分からない」で実際に困ったことがあったら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。