読みもの / 整理と仮説
母親が手術で6日ほど入院する。園が開くより前に、父親は家を出なければならない——この朝の時間を、国の決まりはどこで受け持っているのかを読みました。保育の認定は親の病気を理由にできますが、園が開く時刻は施設の規程で決まります。父親の側の子の看護等休暇は、親の入院を理由に挙げていません。読んだ範囲で、朝の送りに届く形をしていたのは2種類でした。①子育て短期支援事業(ショートステイ)の実施要綱の「保育所や学校等の間について、職員による児童への付き添いの実施に努めること」(市町村や施設に向けた一文)。②育児・介護休業法の始業時刻の変更の措置(時差出勤など)。3歳から小学校に上がる前の子については、2025年10月から会社が5つのうち2つ以上を選んで置く措置の1つで、国の解説は「保育所への送迎の便宜等を考慮して」繰り上げ・繰り下げる制度と書いています。どちらも、市町村や会社がそれを置いているときにだけ使えます。年次有給休暇は、これとは別にあります。この記事は、あなたの場合に何が使えるかを判定しません。
公開されている書き込みに、こういう声がありました。近くに頼れる親族がいない。手術で6日ほど入院することになった。子は認定こども園に教育の認定(いわゆる1号)で通っていて、市の窓口では、医師の診断書があれば一時的に保育の認定(2号)に変えられると言われた。夫は夕方のお迎えには間に合うが、朝は園の預かりが始まる時刻より前に家を出なければならない。ファミリー・サポート・センターは、送迎はできるが、援助してくれる人の家に子を送り、そこから園へ連れて行く形で、近くに登録している家庭がいないと言われた。夫は少人数の職場で、その間ずっと休んでもらうわけにもいかない。子は繊細なので、母親のいない間に不安にさせたくない——という内容です。
返事には「まず勤務先に相談」「夫に出勤を遅らせてもらった」「遠方の親に来てもらう予定だった」「いざというときのために24時間の保育や乳児院のショートステイも調べていた」がありました。
研究所が確かめたのは、この1週間に絡む3つの決まり——①園を使う側の認定、②子を預かる側の事業、③父親の働き方——が、国の文書のどこに、どういう言い方で書いてあるかです。市町村の決まりと、勤め先の就業規則は読んでいません(町ごと・会社ごとに違うので、この記事の外です)。
保育の認定の理由は、子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5 にあり、親の病気はその第3号です。
疾病にかかり、若しくは負傷し、又は精神若しくは身体に障害を有していること。(子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5 第3号)
第1条の5 は「保護者のいずれもが次の各号のいずれかに該当すること」と書いているので、父親は働いていて(第1号)、母親は病気(第3号)、という組み合わせも形の上では入ります。教育の認定から保育の認定への切り替えは、法の第23条(教育・保育給付認定の変更)で、保護者が市町村に申請する形です。
認定には有効期間があり、施行規則 第8条が理由ごとに決めています。出産(第2号)は「出産日から起算して八週間を経過する日の翌日が属する月の末日まで」、求職活動(第6号)は「九十日を限度として市町村が定める期間」、就学(第7号)は卒業予定日まで、と、それぞれに短い期限の形が書かれています。病気(第3号)は第8条に名前が出てきません。つまり病気の場合は、働いている場合と同じ扱いの期間(子が小学校に上がるまで等)に入ります。
6日間だけ保育の認定に変える、という使い方をどう扱うかは、府令からは読めません。法の上で戻り道はあり、保護者がもう一度変更を申請する(第23条第1項)か、市町村が「必要があると認めるとき」に職権で変える(同第4項)形です。書き込みの人は市から「一時的に変更は可能」と言われていて、具体的な扱いは市町村の運用だと思われます(市町村の扱いは1つも見ていません)。
そして、保育の認定に変わっても、園が何時に開くかは別の話です。保育を提供する日と時間は、各施設の運営規程に書かれます(運営の基準 第20条第4号。休みの日の記事に書きました)。認定が変わることで、朝の時間が埋まるわけではありません。
返事の1つにあった子育て短期支援事業は、児童福祉法 第6条の3第3項に書かれた市町村の事業で、こども家庭庁が実施要綱を出しています(令和6年3月30日・令和8年4月8日に一部改正)。短期入所生活援助(ショートステイ)事業の対象として、最初に挙がっているのがこれです。
(ア)児童の保護者の疾病(子育て短期支援事業実施要綱 3(1)② 対象者)
この要綱には、朝の送りに関係する一文がありました。
市町村又は実施施設等は、児童の安全性の確保や利用者の負担軽減等のため、保護者が児童に付き添うことが困難である場合等に、居宅から実施施設等の間や実施施設等から保育所や学校等の間について、職員による児童への付き添いの実施に努めること。(同 4(5))
国のFAQ(第3版・令和7年9月9日更新)No.16 は、この付き添いの国の補助の数え方を「1泊2日で利用があり、夕方のお迎えと翌朝の送迎を行った場合」は2日、と答えています。付き添いへの国の補助(加算)は令和元年度にできたものです(令和7年度の自治体説明会資料)。
ほかに、要綱から読めたことを並べます。
| 何について | 要綱の言い方 |
|---|---|
| どこで預かるか | 児童養護施設・母子生活支援施設・乳児院・保育所・ファミリーホーム等と、里親や市町村長が適当と認めた者など(4(1))。里親等に委ねるときは「委託された者の居宅において又は当該児童の居宅に派遣して」養育・保護を行う(4(3)①) |
| 何日まで | 「当該保護者の心身の状況、当該児童の養育環境その他の状況を勘案して市町村が必要と認める期間」。ただし「過度に長期間とならないようにすること」(3(1)③)。日数の上限は書かれていない |
| 申し込みの順番 | 「特に緊急を要する場合にあっては、利用の申請等の手続きは、事後とするなど保護者の利便を考慮し、弾力的な運営に努めること」(5(3)) |
| ほかの事業との関係 | 一時預かり事業やファミリー・サポート・センター事業との「十分な調整」(5(6)) |
ただし、これは市町村が実施しているときにだけ使える事業です。こども家庭庁の取組見込状況の調査では、令和7年度に実施を見込んでいた市区町村は1,741のうち1,217(69.9%)でした(令和7年4〜5月時点の見込み、同年12月24日までの回答の集計)。実施している市町村のうち、どれだけが園への付き添いまでしているかは、国の数を見つけられませんでした。付き添いの一文も「努めること」で、しなければならない、ではありません。なお要綱には、子が自分から利用を相談してきた場合の送迎や通学の送迎支援の一文(5(5)②⑥)もありますが、こちらは親の入院の場面とは別の場面の話です。
もう1つ。ショートステイは、子が家を離れて泊まることが基本の形です。書き込みの人が気にしていた「子を不安にさせたくない」とどう折り合うかは、要綱の外の話で、研究所には言えません(里親等が子の家に来る形も要綱には書かれていますが、それを置いている市町村がどれだけあるかも見ていません)。
子の看護等休暇(育児・介護休業法 第16条の2)で休める理由は、子のけがや病気の世話、予防接種・健康診断(施行規則 第32条)、学級閉鎖など(第33条)、入園・卒園・入学の式典など(第33条の2)です。法と規則のこの4か条に、「配偶者」「入院」「保護者」「親」の語は1つもありませんでした(同じ方法で「疾病」を数えると第16条の2で拾えます)。親が入院して、元気な子の世話をする人がいない日は、列挙の中にありません。
介護休暇・介護休業は配偶者も対象の家族に入りますが、対象になるのは「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、二週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」の家族で(法第2条第3号・施行規則 第2条)、休んでするのはその家族の介護や世話です(施行規則 第38条)。子の送りのための休みとして書かれた制度ではありません。入院する人がこの状態に当たるかどうかを、研究所は判定しません。
年次有給休暇(労働基準法 第39条)は、使用者は「労働者の請求する時季に与えなければならない」とされ(第5項。事業の正常な運営を妨げる場合は時季を変えられる、のただし書きつき)、条文に休む理由を挙げる書き方はありません。時間単位で取れるのは、職場で労使協定を結んでいる場合に、年5日以内です(第4項)。
育児・介護休業法で朝の時刻に触れていたのは、始業時刻の変更の措置で、子の年齢によって3つの置き方がありました。3歳未満で、短時間勤務が難しい業務として外された人には、代わりの措置の1つとして(第23条第2項・事業主の義務)。小学校に上がる前までの子については、事業主の努力義務として(第24条第1項。3歳になるまでは始業時刻変更等、小学校に上がる前までは育児に関する目的で使える休暇の措置)。そしていちばん強い形が、2025年10月1日に始まった法第23条の3 の措置です。3歳から小学校に上がる前の子を育てる人について、事業主は次の5つから2つ以上を選んで置かなければならず、働く人はその中から1つを選んで使います。
| 措置 | 国の解説(あらまし)の言い方 |
|---|---|
| ① 始業時刻等の変更 | フレックスタイム制か、時差出勤の制度(施行規則 第75条の2)。時差出勤は「保育所への送迎の便宜等を考慮して通常の始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度である必要があります」 |
| ② 在宅勤務等 | 月に10労働日以上(第75条の3第1項) |
| ③ 短時間勤務 | 1日6時間を含むもの(同第3項) |
| ④ 養育両立支援休暇 | 年に10労働日以上(同第4項)。「具体的な休暇の用途を限定しないものとして、1日の所定労働時間数にかかわらず、時間単位で取得することができるものである必要があります」 |
| ⑤ 保育施設の設置運営等 | ベビーシッターの手配と費用の負担なども含む(第75条の4) |
①の時差出勤は、朝の送りのために始業を繰り下げる形を、国の解説がはっきり書いています。④の休暇は、使い道を限らない休暇として書かれているので、看護等休暇の理由の列挙に無い日にも使える形です(法は④から年次有給休暇を除いていて、年休とは別の休暇として数えます)。ただし、①と④の言い方は、法や規則の条文ではなく、厚生労働省の解説(「育児・介護休業法のあらまし」令和7年12月作成)の言葉です。そして会社が5つのうちどれを選んだかで、使えるものが変わります。①も④も置いていない会社もありえます。
書き込みの人の夫の勤め先が何を選んでいるかは、書き込みからは分かりません。この措置が始まったのは、書き込み(2024年8月)より後の2025年10月です。
6日の入院を、3つの決まりに当ててみると、それぞれが違う時間の単位で書かれていました。
そうだとすると、この1週間の穴を埋める部品は、国の書き物の上ではいちばん目立たない所に置かれていて、しかも「置いてあるかどうか」が町と会社しだいです。書き込みへの返事に「まず勤務先に相談」があったのは、決まりの形から見ても筋が通っているのかもしれません。会社が始業時刻の変更や使い道を限らない休暇を置いていれば、相談の入口に名前が付くからです。
これは、読んだ範囲での仮説です。町の窓口が実際にどう案内しているか、会社が実際にどれを選んでいるかは、見ていません。
| 読んだもの | 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第23条(e-Gov法令検索)。同法施行規則(平成26年内閣府令第44号)第1条の5・第8条(同)。育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第2条・第16条の2・第16条の5・第23条・第23条の3・第24条・第52条の2〜第52条の4(同)。同法施行規則(平成3年労働省令第25号)第2条・第32条・第33条・第33条の2・第38条・第75条の2〜第75条の4(同)。児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の3第3項(同)。いずれも e-Gov の法令API の全文XML(10月5日に取得)。労働基準法(昭和22年法律第49号)第39条(同・法令APIの条文取得)。こども家庭庁「子育て短期支援事業について」の頁に掲載の、子育て短期支援事業実施要綱(令和8年4月8日一部改正・7頁)、子育て短期支援事業FAQ(第3版・令和7年9月9日更新)、令和7年度自治体説明会資料、取組見込等状況調査 公表資料(令和8年1月26日差替え)。厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和7年12月作成)の第23条の3 の解説(印刷の頁で120〜121頁) |
|---|---|
| 数え方 | 法令は全文XMLを <Article> ごとにタグを外して空白を潰し、本則だけを対象にした。看護等休暇の理由(法第16条の2・施行規則第32条・第33条・第33条の2)で「配偶者」「入院」「保護者」「親」は0か条、陽性対照の「疾病」は第16条の2の1か条。施行規則第8条に「第一条の五第三号」は0回(第二号4回・第六号2回・第七号2回)。PDFは pdftotext -layout で読み、空白を潰して文を数えた(実施要綱「七日」「日以内」「泊」0件)。「送り」に触れた所を取りこぼさないよう、読んだ法令の本則と PDF 4本で「送迎」「送り」「付き添」「付添」「始業」を数え、出た所を目で読んで、誰に向けた・何歳の子の話かを分けた(施行規則 第1条の「送迎」は認可外の施設の送迎用の車の安全の話、あらましの「付き添」「付添」は介護の通院の付き添いの話で、この場面とは別。始業時刻の変更は育児・介護休業法 第23条第2項・第23条の3・第24条に出る)。走査は research/data/nyuin.py |
| 確かめたこと | 病気が保育の認定の理由であること(施行規則 第1条の5 第3号)と、保護者のいずれもが該当することという書き方。認定の有効期間で、出産・求職・就学に短い期限があり、病気には無いこと(同 第8条)。実施要綱の対象(ア)保護者の疾病、期間、実施施設等、居宅への派遣、付き添いの一文、事後の手続き(原文)。FAQ No.16 の答え。付き添いの加算が令和元年度にできたこと(説明会資料)。令和7年度の実施見込みが1,741のうち1,217(69.9%)であること。看護等休暇の理由の列挙(原文)。要介護状態の期間が2週間以上であること(施行規則 第2条)。法第23条の3 の5つの措置と、事業主が2つ以上を選ぶこと(原文)。時差出勤の「保育所への送迎の便宜等を考慮して」と、養育両立支援休暇の「具体的な休暇の用途を限定しない」が、あらましの解説の言葉であること(法・規則の条文には無い)。第23条第2項(3歳未満・短時間勤務の代わりの措置)と第24条第1項(努力義務)の始業時刻変更等。年次有給休暇の第4項(時間単位・労使協定・年5日以内)と第5項(請求する時季)。第52条の2 が第23条から第23条の3 を苦情の自主的解決の対象に含め、第52条の4 で都道府県労働局長が紛争の解決の援助をすること |
| 確かめていないこと | 市町村が、6日だけの認定の変更をどう扱っているか(1つも見ていない)。ショートステイを実施している市町村のうち、園への付き添いや、子の家への派遣をしているところの数(国の数を見つけていない)。会社が第23条の3 の5つのうちどれを選んでいるかの分布(国の調査があるか探していない。始まって1年なので、まだ無いかもしれない)。一時預かり事業(幼稚園型)で朝の時間を受けられるか(実施要綱を読んでいない)。ファミリー・サポート・センターの援助を、依頼する側の家で行えるか(実施要綱を読んでいない。書き込みの人が言われた形が国の決まりなのか、その町の運用なのかは分からない)。子育て世帯訪問支援事業(2024年に始まった、家に来て家事・育児を手伝う事業)がこの場面に使えるか |
| していないこと | 個別の相談に答えること。書き込みの人が何を使えるかを判定すること。入院する人が介護休暇の対象になるかを判定すること。書き込みの文章を再掲すること |
ここに書いたのは、国が公開している法令・要綱・解説を読んだ結果です。一般的な話であって、あなたのご家庭や、お住まいの町・勤め先の決まりは研究所には分かりません。入院や手術そのもののことは、かかっている病院に相談してください。
ショートステイがあるか、園への付き添いがあるかは、お住まいの市町村の子育ての窓口(こども家庭センターなど)に聞けます。ショートステイは市町村の事業で(児童福祉法 第6条の3第3項)、要綱は、特に急ぐときは手続きを後にするなど柔軟に扱うよう市町村に求めています(実施要綱 5(3))。保育の認定の切り替えも、認定をした市町村の保育の担当です(子ども・子育て支援法 第23条)。
勤め先が第23条の3 の5つのうちどれを置いているかは、就業規則か人事の担当で分かります。事業主は、子が3歳になる前の適切な時期に、選んだ措置を個別に知らせ、意向を確かめることになっています(法第23条の3第5項)。これらの措置について勤め先と話がこじれたときは、都道府県労働局長が解決の援助をすることになっていて(法第52条の2〜第52条の4)、窓口は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
子のほうが病気のときの休みについては子の熱で休んだ日の記事、園が開く日と時間については休みの日の記事、お迎えの時刻についてはお迎えの時刻の記事にも書いています。
この記事は、公開されている書き込み1件と、それへの返事から始まりました(同じ週に、別の掲示板で「母親の入院、子供はどうしますか?」という題の書き込みも見ています)。書き込みの文章そのものは残していません(研究所が持っているのは1行の要約と元のURLだけです)。同じことで困っていたら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。