ともりの困りごと研究所

読みもの / 整理と仮説

産休の前に体調で長く休むと、保育園の申込みの「働いた実績」は足りなくなるのか — 記載要領は、育休などで直近に働いていない人には休む前の実績を書かせ、産休・育休の月は除いている

ともりの困りごと研究所 / 2026年10月11日

保育園の申込みで勤め先が書く就労証明書について、国が示している記載要領は、「就労実績」の欄(No.7)にこう書いています——育児休業などで直近3か月に1か月分の実績が無いときは、育児休業などを取る前の(産休・育休などを取った月を除いた)実績を書く。新しく採用されて実績が無い人は、これからの見込みを書く。保育の認定の要件の条文(子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5第1号)は「労働することを常態とすること」で、「実績」の語はありません。「就労実績」は、施行規則が原則として使うと定めた様式第一号(就労証明書)の欄の名前として出てきます。そして、休む前の月にさかのぼる一文は、その府令の様式ではなく、国が別に示した記載要領の側にあります。ただ、産休の前に体調で休んだ月が、除かれる「など」に入るのかは、記載要領に書かれていません。利用調整の点数の付け方は市町村が決めます。

どこから来た問い

昨夜の記事「切迫流産で長く休むと、育児休業給付の『12か月』は足りなくなるのか」と同じ投稿から来ています。公開されている掲示板に、職場の同僚が切迫流産と診断されて2か月ほど自宅で療養しているが、近く立ち仕事に戻りたいと言っている——理由は「育休の手当に要る出勤の日数が足りない」ことと「保育園に入るときに必要な働いた実績が足りない」ことだった、という投稿がありました(2026年8月・投稿したのは同僚で、本人ではありません)。昨夜は1つめの手当の話を読みました。今夜は2つめ、保育園の「働いた実績」です。

研究所は、働いてよいか・休むべきかには答えません。それは体の判断で、診ている医師にしか分かりません。調べたのは、出勤したい理由の中身——休んだ月があると、保育園の申込みで「実績が足りない」ことになるのか——が、国の決まりのどこにどう書いてあるかです。

認定の要件の条文は「常態」で、「実績」は様式の欄の名前

保育園を使うには、まず市町村から保育の必要性の認定を受けます。働いていることを理由にする場合の要件は、施行規則 第1条の5第1号です。

一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること。
(子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5第1号)

子ども・子育て支援法と施行規則の条文(全文XMLの文字の部分)で「実績」を数えると、どちらも0件でした(同じ方法で数えた「常態」は施行規則に1件=この号)。ただしこの数え方は、XMLの中に画像で収められている様式を数えていません。様式は画像を開いて目で見ました(次の節)。認定の事務についての国の通知(「子ども・子育て支援法に基づく教育・保育給付認定等並びに特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業者の確認に係る留意事項等について」)も、この号の説明は時間の下限の考え方(48〜64時間の範囲で市町村が地域の就労実態などを考えて決める)で、何か月働いたかには触れていません。この通知に「実績」が出るのは1か所だけで、施設の利用定員の話でした。

「実績」の欄は府令の様式に、さかのぼりの一文は記載要領に

「実績」が出てくるのは、勤め先が書く就労証明書です。施行規則 第2条第2項第2号は、働いていることを理由に認定を申請するとき、それを証する書類は「原則として様式第一号による」と定めています。その様式第一号(府令の様式)に、No.7「就労実績」の欄があります。休業に関わる欄はこう並んでいて、右の列はこども家庭庁が示している記載要領の言葉です。

欄記載要領に書いてあること
No.6 就労時間雇用契約に基づく時間(実際に働いた時間ではない。10月6日の記事)
No.7 就労実績直近3か月の1か月あたりの日数・時間。育児休業などで直近3か月に1か月分の実績が無いときは、取る前の(産休・育休などを取った月を除いた)実績。新規採用などで実績が無いときは、今後の見込み
No.8 産前・産後休業の取得取得予定・取得中と、その期間。法令上の産前・産後休業に限らず、会社独自の就業規則などに基づく休業も含む
No.9 育児休業の取得取得予定・取得中・取得済みと、その期間
No.10 産休・育休以外の休業取得予定・取得中・取得済みと、その期間。理由は介護休業/病休/その他から選ぶ。法令上の休業に限らず、会社独自の休業も含む
No.11 復職(予定)年月日育児休業などを終えて復職する予定があれば、その日

No.7 の記載要領の一文は、こうです。

直近3か月の1か月当たりの就労日数、就労時間数について記載してください。なお、育児休業等により直近3ヶ月において1月分の就労実績がない場合は、育児休業等取得前の(産休・育休等取得月を除いた)就労実績を記載してください。新規採用等で就労実績がない場合は今後の就労見込みを記載してください。
(就労証明書〔標準的な様式〕記載要領 No.7)

この一文のとおりに書くと、育休中に申し込む人の実績の欄には、取る前の月の数字が入り、産休・育休の月はそのさかのぼりから除かれます。実績がまったく無い人(新しく採用された人など)には、見込みを書く道もあります。様式の上では、実績の欄は、契約の時間(No.6)・休業の期間(No.8〜10)・復職の予定日(No.11)と並ぶ欄の1つです。

書かれていないのは、産休の前に体調で休んだ月

投稿の場面に当てはめると、引っかかるのは1か所です。産休より前に、体調で2か月ほど休んでいる。育休中に就労証明書を書いてもらうとき、直近3か月は育休なので実績は無く、さかのぼることになります。そのとき産休・育休の月は除かれますが、その前の、体調で休んだ月はどうなるのか。

記載要領が除くと書いているのは「産休・育休等取得月」、さかのぼるきっかけも「育児休業等により」です。様式には、産休・育休とは別に No.10「産休・育休以外の休業」の欄があり、その理由に「病休」があります(No.8 の産前・産後休業の欄も、会社独自の休業を含むと書いています。体調で休んだ期間を勤め先がどちらの欄に書くかで話が変わりうるが、どちらに書くものかは記載要領に書かれていません)。病休の月が「等」に入って除かれるのか、入らずにさかのぼった先の月として数えられるのかは、記載要領のどこにも書かれていませんでした。「病休」「病気」「切迫」「妊娠」の語は、記載要領に(No.10 の選択肢の「病休」1件を除いて)ありません。

そしてこの記載要領は府令には付いておらず、こども家庭庁の「令和6年度就労証明書提出に関するFAQ」(令和5年9月1日版)No.11 は、「記載要領は修正してもよいか」に「差し支えございません」と答えています。ただしこれは、様式が府令の様式になった2024年9月より前の答えで、その後の扱いは確かめていません。あなたの市町村で、休んだ月をどう書くことになっているかは、その市町村の記載要領と窓口でしか分かりません。

点数(利用調整)は市町村が決める

認定を受けても、希望者が多い園では市町村が順番を決めます(利用調整)。国の通知は、この順番の付け方を「調整指数上の優先度を高めることにより、優先利用を可能とする仕組みを基本とする」と書き、優先利用の対象として考えられる事項の例を9つ(⑨は「その他市町村が定める事由」)並べています。その前置きは「運用面の詳細を含め、実施主体である市町村において、それぞれ検討・運用する必要がある」で、6つめが「育児休業を終了した場合」です。

⑥育児休業を終了した場合
(例)・育児休業取得前に特定教育・保育施設等を利用しており、特定教育・保育施設等の利用を再度希望する場合
・育児休業取得前に認可外保育施設等を利用しており、特定教育・保育施設又は地域型保育事業の利用を希望する場合
・1歳時点まで育児休業を取得しており、復帰する場合
(同通知「7 優先利用」(2)ウ・抜粋)

2025年9月12日のこども家庭庁の事務連絡も、優先利用の各事項は「市町村において検討・運用いただく」ものだと改めて書いています。国の「基礎資料(子どものための教育・保育給付の支給認定)」も、優先利用の例に「育児休業明け」を並べたうえで、「実際の運用に当たっては、更に細分化、詳細な設定を行うなど…市町村ごとに運用」としています。今夜読んだ国の文書には、何か月働いたか(勤続や在職の月数)を点数にする定めは見当たりませんでした。点数にしている市町村があるかどうかは、国の文書からは分かりません。国の委託調査(「保育所等の入所にかかる利用調整に関する調査研究」報告書・2025年4月)も読みましたが、「勤続」「在職」は0件、「就労実績」は1件(就労証明書の書き方の負担の話)で、どの市町村が何を指数に入れているかの数は見つけられませんでした。

なぜ「実績が足りない」と思えてしまうのか(ここからは仮説)

研究所の読みはこうです。「就労実績」の欄は府令の様式そのものにあり、直近3か月の数字を書く形になっている。一方、育休中の人のためのさかのぼりの一文は府令ではなく、国が別に示した記載要領の中——勤め先が読む紙——にあり、申し込む本人の目にはまず入らない。欄は強い決まりの側に、例外は案内の側にある、という並びです。だから「休んだ月は実績が無い月になる」と考えるのは自然です。しかも、産休の前に体調で休んだ月については、さかのぼりの一文も何も言っていない——心配の根っこは、ちょうど国の様式が書いていない1か所に当たっています。だからこそ、そこは出勤して埋めるより先に、市町村に聞いて確かめられる所だと考えています。

確かめたこと/確かめていないこと

読んだもの子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号・e-Gov法令検索)・同法施行規則(平成26年内閣府令第44号・同)の全文(e-Gov の法令API)と、施行規則のXMLに画像で収められた様式第一号(PDFにして目で見た)。こども家庭庁「就労証明書」の頁の就労証明書(標準的な様式)PDF(6頁・後ろに記載要領。見出しは【就労証明書(簡易版)】記載要領)と、同じ頁のExcel(2026年8月の掲載)——No.7 の文は両方同じ。同じ頁の「令和6年度就労証明書提出に関するFAQ」(令和5年9月1日版)と、令和6年10月15日付けの事務連絡。こども家庭庁「保育」の頁の「基礎資料(子どものための教育・保育給付の支給認定)」(6頁)、令和7年9月12日付け事務連絡「保育所等の利用を希望する方の個々の希望や事情を踏まえた保育ニーズの把握及び利用調整について」。認定事務の通知(平成26年9月10日付け・令和4年3月23日の一部改正通知に付いた新旧対照表で読んだ。内閣府の地方分権改革の頁に掲載のもの。この改正が直したのは第3〔施設・事業者の確認〕で、引いた認定と優先利用の部分は新旧で同じ)。三菱UFJリサーチ&コンサルティング「保育所等の入所にかかる利用調整に関する調査研究」報告書(令和6年度 子ども・子育て支援等推進調査研究事業・188頁)
数え方法令は全文XMLのタグを外して空白を潰して数えた。「実績」法0・施行規則0(陽性対照「常態」施行規則1、「育児休業」法14・施行規則3)。この数え方は画像の様式を数えないので、様式第一号は画像で見て、No.7「就労実績」・No.10「病休」の欄があることを確かめた。PDFは pdftotext -layout。記載要領の「病休」1(No.10 の選択肢)・「病気」「傷病」「切迫」「妊娠」0・「育児休業等」3(PDF。Excel は4)。認定事務の通知の「実績」1(利用定員の段)。委託調査の「就労実績」1(就労証明書の書き方の負担の話)・「勤続」「在職」0。走査は研究所のリポジトリの research/data/yasumi-jisseki.py
確かめたこと認定の要件(施行規則 第1条の5第1号)が「常態」で書かれていること。証明の書類は原則として様式第一号によること(第2条第2項第2号)と、その様式に No.7「就労実績」・No.10「産休・育休以外の休業」(理由に「病休」)があること。就労証明書の記載要領 No.7 の文(育児休業などで直近に実績が無ければ取る前の実績・産休育休などの月を除く・新規採用などは見込み)。No.10 に「産休・育休以外の休業」と理由「病休」があること。2023年のFAQ No.11(記載要領の修正は差し支えない)。認定事務の通知の「7 優先利用」(2)ウ(例は市町村が検討・運用・⑥「育児休業を終了した場合」)。2025年9月の事務連絡の「市町村において検討・運用」
確かめていないこと産休の前に体調(切迫流産など)で休んだ月が、記載要領の「育児休業等」「産休・育休等」に入るのか(国の文書には書かれていない)。市町村がそれをどう扱っているか(1つも見ていない)。様式が府令の様式になった後も、市町村が記載要領を直してよいのか。何か月働いたかを利用調整の点数にしている市町村があるか、どれくらいあるか。認定事務の通知に令和4年3月より後の改正があるか(こども家庭庁の頁で通知の本体を見つけられず、内閣府の頁の写しで読んだ。10月6日の記事では令和2年版までしか確かめていなかった)。投稿の人が、上に子がいるか・申込みがいつか
していないこと働いてよいか・休むべきかを言うこと。特定の人が認定されるか・入園できるかを判定すること。声の文章を再掲すること

いま困っている方へ

ここに書いたのは、国の法令と国の示した様式・通知を読んだ結果です。一般的な話であって、あなたの市町村でどう扱われるかは研究所には分かりません。そして、働いてよいか・休むべきかは、診ている医師に聞いてください。この記事は、その判断に「保育園の実績のために出勤しなければ」という理由が混ざっているときに、その理由の中身を確かめるためのものです。

自分の場合にどの月が実績として書かれるかは、住んでいる市町村の保育の担当の窓口に聞くのが確かです。そのとき、「育休中に申し込む予定で、産休の前に体調で休んだ月がある。就労証明書の就労実績(No.7)には、どの月を書いてもらえばよいか」と聞くと、記載要領のどこの話かが伝わりやすいはずです。休んだ期間は、様式の No.10(産休・育休以外の休業)に勤め先が書く欄があります。

育児休業給付の「12か月」のほうは昨夜の記事に、妊娠中の体調で仕事を軽くしてほしいときの入口(母性健康管理指導事項連絡カードなど)は「配慮してほしい」の入口の記事にまとめてあります。

元になった声について

この記事は、公開されている掲示板の投稿1件から始まりました。投稿したのは本人ではなく職場の同僚で、本人の事情はその人を通した話です。投稿の文章そのものは残していません(研究所が持っているのは1行の要約と元のURLだけです)。同じことで困っていたら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。