ともりの困りごと研究所

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寝かしつけたあとの仕事は、どこで数えられるのか — 育児・介護休業法の決まりで、仕事の量が書かれているのは主に「周りの人」の側だった

ともりの困りごと研究所 / 2026年10月3日

育児・介護休業法には、残業・時間外・深夜を「時間」で制限する請求の仕組みがあります。けれど、夜に家でした仕事がその「時間」に入るかどうかは、国の労働時間のガイドラインの「使用者の指揮命令下に置かれているか」で決まり、そのガイドラインに「業務量」「持ち帰り」の語は0件でした。読んだ文書のうち、仕事の量が多すぎることを労働時間と結びつけて書いていたのは、テレワークのパンフレットの1か所だけです。育児・介護休業法の法・施行規則・指針で仕事の量が書かれているのは、主に「周りの人」の側——休む人や短く働く人の分を受け持つ同僚の業務負担——でした。戻ってきた本人の「業務量」が出てくるのは、指針の1か所、2025年10月から始まった、本人の意向に配慮するときの例の1つだけです。

どこから来た問い

公開されている書き込みに、こういう声がありました。育休から1歳すぎの子を保育園に預けて職場に戻ったあと、しばらくして、前とは違う、重くて難しい仕事に回された。朝は園に預けて出勤し、夕方は仕事を切り上げてお迎えに行き、夜、子を寝かしつけてから仕事に戻り、寝るのは深夜。それが4年ほど続いた。やがて心身がもたなくなり、会社を辞めることを選んだ——という内容です。

この記事は、この人がどうすればよかったかを書くものではありません。研究所が確かめたのは、夕方に切り上げた分が夜に回る、という形を、国の決まりはどこで数えているのかでした。時間を短くする仕組みはあります。では、仕事の量はどこに出てくるのか。今回は、育児・介護休業法とその施行規則・指針、国の労働時間のガイドライン、テレワークのガイドラインを読みました。

声には、短時間勤務や、下に書く残業・深夜の制限を使っていたかどうかは書かれていません。だからこの記事は、それらの制度がこの人の夜にどう働いたかを言うものではありません。声の中の体の不調や、職場で配置が変わったことの是非についても、研究所は何も判断しません。その人の事情は研究所には分かりません。

法律が数えているのは「時間」

育児・介護休業法には、小学校に上がる前の子を育てている人が請求すると、会社が所定労働時間を超えて働かせてはならない(第16条の8)、月24時間・年150時間を超えて時間外労働をさせてはならない(第17条)、夜10時から朝5時まで働かせてはならない(第19条)という3つの制限があります。どれも「時間」の線です。3つの違い(家に誰がいるかを見るのは深夜だけ、など)と、請求の書き方が施行規則にまで書いてあることは、研究所の単身赴任の記事と言い出し方の記事に書いています。

条文の結びは、第16条の8と第19条が「労働させてはならない」、第17条が「労働時間を延長してはならない」です。どれも、働かせる時間を禁じる形です。だから、夜に家でした仕事がこれらの制限に掛かるかどうかは、その時間が「労働」に当たるかどうかで決まります。それを決めているのは育児の法律ではなく、労働時間の考え方のほうでした。

「労働時間」を決める一文には、量の語が無い

国は、労働時間とは何かを「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)に書いています。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。
(同ガイドライン 3)
(…)客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること。
(同)

労働時間かどうかは、就業規則にどう書いてあるかではなく、実際にどうだったかで決まる、という書き方です(同じ節に「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず」とあります)。その例として挙がっているのは、着替え・後始末、待機、義務づけられた研修の3つでした。

このガイドライン(4頁)の全文で、「業務量」は0件、「持ち帰り」は0件、「自宅」も0件でした(「労働時間」は55件拾えるので、数え方は働いています)。量がどう効くかに近い言葉は、上の「余儀なくされていた」の1語だけです。

量と労働時間を結びつけていたのは、テレワークのパンフレットの吹き出し

読んだ文書のうち、仕事の量が多すぎることを、労働時間に当たるかどうかと結びつけて書いていたのは、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」のパンフレット版(36頁)の23頁、「時間外・休日労働の労働時間管理」の節にある吹き出しでした。

時間外労働等について労働者からの事前申告がなかったり、申告に対して許可を与えなかった場合でも、業務量が過大であったり、明示、黙示の指揮命令があったと解しうる場合には、労働時間に該当します。
(テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン[パンフレット]23頁)

ただし、これには2つの断りが要ります。

読んだ6つの文書すべてで、「持ち帰り」は1件もありませんでした。夜に家でする仕事は、日常の言葉では「持ち帰り」と呼ばれますが、国の決まりの言葉には、その名前の置き場がありません。

育児・介護休業法の側で、本人の「業務量」が出てくるのは1か所

育児・介護休業法と施行規則の本則を条ごとに、指針と2つのガイドラインを全文で数えました。

読んだもの「業務量」「持ち帰り」
育児・介護休業法(本則)0か条0か条
同 施行規則(本則)0か条0か条
同 指針(平成21年厚生労働省告示第509号)1件0件
労働時間の適正な把握のガイドライン0件0件
テレワークガイドライン(本体)3件(みなし・裁量労働制の確認の話)0件
同(パンフレット)4件(うち上の吹き出しが1件)0件

指針の1件は、2025年10月1日に始まった仕組みの中にあります。法第21条第2項・第3項は、会社に、本人の仕事と育児の両立についての意向を個別に聞き、就業の条件を決めるときにその意向に配慮することを義務づけました。聞く中身は施行規則 第69条の7 にあり、①始業・終業の時刻 ②就業の場所 ③両立の制度を使う期間 ④その他、両立の支障となる事情の改善に資する就業の条件、の4つです。ここにも「業務量」の語はありません。

語が出てくるのは、その次の段——指針の、配慮のしかたの例です。

法第二十一条第三項(…)の意向の配慮については、事業主として労働者の意向の内容を踏まえた検討を行うものであり、当該事業所の状況に応じつつ、例えば、次に掲げる事項について配慮することが考えられること。イ 始業及び終業の時刻 ロ 就業の場所 ハ 業務量 ニ (…)制度又は措置の利用期間 ホ その他労働条件
(指針 第二の五の三(二))

書き方は「例えば」「考えられる」です。配慮すること自体は法の義務ですが、業務量を見直すことは、その配慮の例の1つとして置かれています。

量の言葉は、「周りの人」の側にあった

「業務量」の1語だけで探すと、量の話を取りこぼします。そこで、施行規則と指針を「業務の配分」「業務負担」「業務体制」「業務の分担」「人員」でも探し、出てきた所を前後ごと読みました。

どこに何と書いてあるか誰の仕事の量か
指針 第二の十四(三)ニ(育児休業等に関するハラスメントの原因や背景を解消する措置)事業主は「業務体制の整備など」必要な措置を講じなければならない。そのとき、短時間勤務などで「短縮分の労務提供ができなくなること等により、周囲の労働者の業務負担が増大することもあることから、周囲の労働者の業務負担等にも配慮すること」に留意する。措置の例は「周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うこと」「業務の点検を行い、業務の効率化等を行うこと」周りの人
施行規則 第21条の7 ホ「育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置」(産後パパ育休の申出期限を延ばす労使協定を結ぶときに選べる措置の1つ)休む人の分を誰が受け持つか
指針 第二の五の三(二)ハ意向の配慮の例として「業務量」本人

同じ十四(三)ニには、短く働く本人の側についての一文もあります。「労働者の側においても、(…)周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の制度の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと」。本人について書かれているのは、量ではなく意識でした。

指針は、短く働く人の分が周りに回ることをはっきり書き、そこに業務分担の見直しという手当てを置いています。読んだ範囲で、短縮した分が本人の夜に回ることを書いた一文は見当たりませんでした。

本人の「業務量」の1か所が働く時期

この意向を聞くことが義務になっている時期は、2つです。妊娠・出産を申し出たとき(法第21条第2項)と、子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの1年間(法第23条の3第6項・施行規則 第75条の8)。指針は、そのほかに「育児休業後の復帰時」や本人から申出があったときにも意向を確認することが「望ましい」としています(指針 第二の五の三(一))。ここで「望ましい」とされているのは、意向を確認することまでです。

法第21条第3項は「前項の規定により意向を確認した労働者」について配慮を求める書き方なので、条文の形の上では、配慮の義務が結びついているのは義務の2つの時期に聞いた意向です。育休から戻るときは、そのどちらでもありません(同じ「時期」の形は、研究所の子の看護等休暇の記事でも見ました)。

あわせて、法第21条第6項は、確認された意向の内容を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと書いています。

決まりの形から見えること(ここからは仮説)

読んだ範囲で、国の決まりは、育児をしながら働く人を主に「時間」で守っていました。所定外・時間外・深夜の制限も、短時間勤務も、どれも時間の線です。

時間の線は、仕事の量がそのままなら、量を夜に押し出すことがありうる形をしています。夕方に切り上げた分が、寝かしつけのあとに回る——声に書かれていた毎日は、その形をしていました(制度を使っていたかどうかは、上に書いたとおり分かりません)。押し出された夜の仕事が「時間」の線に掛かるかどうかは、それが指揮命令下の労働かどうかで決まり、その判断の言葉は「余儀なくされていた等の状況」「個別具体的に」です。量の多さそのものを名指しして労働時間と結びつけた一文は、読んだ範囲ではテレワークのパンフレットにしかありませんでした。

量の言葉は、指針の中では主に周りの人の側に置かれていました——短く働く人の分が同僚に回ると書き、業務分担の見直しを措置の例に挙げています。戻ってきた本人の量は、2025年10月から指針にある「ハ 業務量」の1語で、それも配慮の例です。義務の時期に聞いた意向に結びついていて、育休から戻るときはその時期に入っていません。時間は条文で、周りの量は措置の例で、本人の量は配慮の例の1語で——読んだ範囲の決まりの重さの違いは、そう見えます。

この声の4年間がいつだったのかは、研究所には分かりません。2025年10月より前なら、この意向の聴取の仕組みはまだありませんでした。

確かめたこと/確かめていないこと

読んだもの育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第16条の8・第17条・第19条・第21条・第23条の3・第52条の2〜第52条の4(e-Gov法令検索)。同法施行規則(平成3年労働省令第25号)第21条の7・第69条の6・第69条の7・第75条の8(同)。労働基準法(昭和22年法律第49号)第104条(同)。いずれも e-Gov の法令API から取得。指針(平成21年厚生労働省告示第509号)は、厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和7年12月作成・PDF 226頁)の巻末に収められた全文(令和7年10月1日施行分を含む)で読み、第二の五の三と第二の十四を読み、あわせて同あらまし Ⅸ-2 の解説を読みました。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日・4頁。厚生労働省の掲載ページから取得)。「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(本体・20頁)と、そのパンフレット版(36頁)
数え方法令は全文XMLを <Article> ごとにタグを外して空白を潰し、本則だけを対象にした。PDFは pdftotext -layout で読み、空白と改行を潰して数えた(指針はあらましのPDFの217頁目以降)。数え方が働いているかを確かめるため、各文書に在ると分かっている語を1つずつ同じ方法で数えた(法「請求」10か条・施行規則「在宅」6か条・指針「意向」29件・労働時間ガイドライン「労働時間」55件・テレワーク本体61件・パンフレット103件)。「業務量」の語だけでは量の話を取りこぼすので、施行規則と指針は「業務の配分」「業務負担」「業務体制」「業務の分担」「仕事量」「人員」でも探し、出た所を前後ごと読んだ(施行規則の「人員」の残り1件は第81条=募集の届出の記載事項。指針の「業務分担」の残り1件は第二の十四(一)イの、業務分担などの観点からの業務上必要な言動はハラスメントに当たらない、という定義の側の一文で、どちらも誰かの量を減らす話ではなかった)。パンフレットの吹き出しは2列が混ざるので、23頁を画像にして目で読んだ。走査は research/data/mochikaeri.py
確かめたこと3つの制限の結び——第16条の8・第19条「労働させてはならない」、第17条「労働時間を延長してはならない」(原文)。指針 第二の十四(三)ニの「周囲の労働者の業務負担」の一文・「自身の制度の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識」の一文・措置の例2つ(原文)。施行規則 第21条の7 ホの「業務の配分又は人員の配置」(原文)。労働基準法 第104条の申告と第2項の不利益取扱いの禁止(原文)。労働時間ガイドラインの「明示又は黙示の指示」「義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況」「個別具体的に判断」の文(原文)。同ガイドラインに「業務量」「持ち帰り」「自宅」が0件であること。テレワークのパンフレット23頁の吹き出しの文(画像で確認)。同ガイドライン本体に「黙示」が0件であること。施行規則 第69条の7 の4つの事項。指針 第二の五の三(一)(二) の文(原文)。法第21条第3項が「前項の規定により意向を確認した労働者」について配慮を求めていること、第6項の不利益取扱いの禁止。意向の聴取の仕組みが令和7年10月1日施行であること(あらまし Ⅸ-2)。第52条の2 が第21条を苦情の自主的解決の対象に含めていること
確かめていないこと夜に家でした仕事が、ある人の場合に労働時間に当たるかどうか(ガイドライン自身が「個別具体的に判断」と書く。研究所は判断しない)。テレワークではない「持ち帰り」について、国が別の文書で何か書いているか(通達・Q&A・裁判例はあたっていない)。労働基準法・労働安全衛生法の、労働時間の状況の把握や長時間労働の面接指導の条(家でした時間をどう扱うか)は今回読んでいない(労働基準法は第104条だけ読んだ)。次世代育成支援対策推進法や、その行動計画策定指針など、育児・介護休業法の外の決まりで量がどう書かれているかは数えていない。テレワークガイドラインの旧版(平成30年)は読んでいない。労働契約法は読んでいない。短時間勤務(法第23条)の指針の書きぶり(業務の量を減らすことに触れているか)は、「業務量」の語では0件だったことしか確かめていない。復帰後に配置が変わったことの扱い(不利益取扱いに当たるかどうかは個別の判断で、研究所は書かない)。意向の聴取が始まってから、会社が実際に業務量を見直しているか(調査にあたっていない)
していないこと個別の相談に答えること。その人の働き方や辞めたことの良し悪しを言うこと。体や心の状態を判断すること。書き込みの文章を再掲すること

いま困っている方へ

ここに書いたのは、国が公開している法令・指針・ガイドラインを読んだ結果です。一般的な話であって、あなたの職場や働き方の事情は研究所には分かりません。

行き先は、法律ごとに条文に書かれています。育児・介護休業法のこと(所定外・時間外・深夜の制限、意向の聴取と配慮、それを理由とした不利益な取扱い)は、都道府県労働局長に援助を求められます(育児・介護休業法 第52条の4。窓口は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室))。労働時間や残業代など労働基準法のことは、労働基準監督署・労働基準監督官への申告の道があります(労働基準法 第104条)。どちらも、使ったことを理由に不利益な取扱いをすることは条文で禁止されています(育児・介護休業法 第52条の4第2項、労働基準法 第104条第2項)。所在地は厚生労働省の都道府県労働局の所在地一覧から辿れます。

心や体がつらいときは、仕事の決まりより先に、かかりつけの医師などに相談してください。働く人の心の健康については、厚生労働省のこころの耳に相談窓口の案内があります。

元になった声について

この記事は、公開されている書き込み1件から始まりました。書き込みの文章そのものは残していません(研究所が持っているのは1行の要約と元のURLだけです)。同じことで困っていたら、投稿箱で教えてください。研究所はメールも名前も受け取りません。